蓄電池を制する者が再エネを制す

正にこの言葉に凝縮されていると思います。
どんな蓄電の技術を開発し、どこまでコストを下げられるか。
脱炭素時代の電力は蓄電を制するものが覇者となる
第4の革命カーボンゼロ 再エネテックの波②
蓄電池、価格破壊へ競争 4分の1で「再エネ9割」現実味
(日経新聞 2023/06/06 朝刊記事)
オーストラリア南部の南オーストラリア州。豊かな自然やワインで有名な州はいま、再生可能エネルギーの普及で世界の先頭を走る。太陽光と風力の発電量は州の年間需要157億キロワット時の約6割に相当。2030年にはすべての需要を賄い、50年には需要の5倍の供給能力を備えて州外への「輸出」も見据える。
再エネの普及を支えるのが、つくった電気をためこむ蓄電池だ。米テスラなど蓄電大手は商機とみて同州に相次ぎ進出し、再エネ・蓄電池関連の投資は60億豪ドル(約5500億円)を超えた。23年には新たな施設が稼働し、同州の蓄電能力は一気に2倍超に高まる。
電気は需要と供給が常に一致しなければ周波数や電圧が狂い停電につながる。再エネの発電量は天候で変動し、再エネの比率が高まるほど変動幅は大きくなる。電気が余った時にためて足りない時に放出する蓄電池で変動をならす。
16年9月には悪天候で再エネの発電量が減ってブラックアウト(全域停電)が起きた。それでも火力発電に回帰せず、蓄電池拡大で再エネの弱点を補った。州政府の元高官は「再エネの周波数や電圧の管理は発電量を増やす以上に重要。停電を起こす急激な変動を避けるために蓄電池は欠かせない」と話す。
「捨てる」を回避
英調査会社ウッドマッケンジーは電力網につなぐ蓄電池は30年に世界で1億9400万キロワット時と20年比で19倍に膨らむとみる。各国で再エネが普及し、電気を「捨てる」のを避けようと蓄電投資が増える。
それでもいまの蓄電池の国際流通価格(1キロワット時で約4万円)では再エネを柱に脱炭素を実現するにはまだ高い。
日本で再エネ90%、残り10%を温暖化ガスを排出しない水素火力発電で補う場合、蓄電池が大量に必要になるため、現状の価格なら日本の発電コストは2倍になる。仮に蓄電池が1万円に下がれば上昇幅は4割、5000円なら3割に抑えることができ、電源構成として現実的な選択肢になる。日本経済新聞が21年時点の発電コストをもとに立命館アジア太平洋大学の松尾雄司准教授の論文から試算した。

EVや岩石活用も
国際エネルギー機関(IEA)による世界の脱炭素シナリオも50年の再エネ比率を8〜9割とみる。脱炭素と経済性の両立には、電力網に蓄電池をいかに安く導入するかがカギとなる。
有望なのが急速に普及する電気自動車(EV)の活用だ。世界で個人が所有する車の9割は駐車場にとまっている。EVを「電池」とみなして電力網につなげば、蓄電投資を抑制できる。
IEAの予測では30年に世界のEVとプラグインハイブリッド車(PHV)は合計で最大3億5千万台になる。英政府は国内で30年にEVの半数が送電網に接続すれば、原発16基分の1600万キロワットもの電気を補う効果があると試算する。
EVは主流のリチウムイオン電池を載せるが、それ以外の蓄電技術の開発も盛んだ。独シーメンス・エナジー子会社のシーメンス・ガメサ・リニューアブル・エナジーは岩石を熱してエネルギーをためる技術を開発した。
コンクリートの建物内に並べた大量の小石に熱を蓄え、水蒸気を出して発電タービンを回す。100万キロワット時の電気を1〜2週間蓄える。コストは従来の蓄電池の5分の1になる。20年代半ばの商用化を目指す。
EVを組み込むことができる柔軟な電力システムになっているか。どんな蓄電の技術を開発し、どこまでコストを下げられるか。脱炭素時代の電力は蓄電を制するものが覇者となる。

