「スケールフリーネットワーク ものづくり日本だからできるDX」

SPEEDAのWebinarがとても良くて…いつも聴講させて貰っています。
#7『サーキュラーエコノミーで日本を変える - 新時代のビジネスモデル&技術戦略 -』の中で、とても興味深いお話をされていた、株式会社東芝 執行役上席常務 最高デジタル責任者 島田 太郎 氏。出筆された本を読みました。
もうひとり、NPO法人 産学連携推進機構 理事長 妹尾 堅一郎 氏のお話が凄く解りやすく感銘を受けました。氏の「技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか―画期的な新製品が惨敗する理由」も読んでみようと思います。

  1. 日本企業は「DX」にどう立ち向かえばいいのか
    ・「ネットワーク」が人類を特別な存在にした
    典型的なチンパンジーの群れの上限は、およそ50頭。群れの個体数が増えるにつれて秩序が不安定になり、群れは分裂します。一方、ほかの生物よりもはるかに柔軟なコミュニケーション手段を獲得した人間は、50人を超えた大きな組織を形成できるようになりました。そこで重要な役割を果たしたのが「うわさ話」です。うわさ話でまとまっている「自然な」集団のサイズは150人が限度です。では人類はどうやってそれ以上の集団を形成できるようになったのか。重要な役割を果たしたのが「虚構」です。法律や正義、お金といった「虚構の物語」を信じることにより、人類は社会を築き、互いに見知らぬ大勢の人々が協力できるようになったのです。
    ・SNSの限界と、これからのデジタルネットワーク
    SNSはあくまでサイバー上でネットワークが完結するもの。現実の情報が足りておらず、不自然なネットワークになってしまいます。身の回りにあるモノや環境といったフィジカル(現実世界)の情報をつなぐことで、ネットワークはより自然な形になるのです。
  2. スケールフリーネットワークの爆発力
    ・ローレンツ方程式とローレン・アトラクタ
    ・スケールフリーネットワークがイノベーションを生む
    スケールフリーネットワーク上では、一部のハブが膨大なリンクを持ち、強大な力を発揮します。逆に言うと、少数のリンクしか持たないノードが無数に存在するのです。
    Amazonが小売りの世界で成功した企業になった理由のひとつは、その圧倒的な品揃えにあります。爆発的に売れる一部の商品と同時に、ほとんど売れないような膨大な商品も用意しておくことで、「アマゾンで探せば何でも見つかる」という状態を作り上げ、顧客を集めました。リアル店舗ではできないスケールフリーを、オンラインの強みをいかして実現したのです。
    ・ドイツで進む次なる産業革命
    インダストリー1.0 蒸気機関を利用した機械化
    インダストリー2.0 電力を活用した大量生産の開始
    インダストリー3.0 PLC(Programmable Logic Controller)などによる生産工程の自動化
    インダストリー4.0 インターネットにつながるスマート工場
    ・インダストリー4.0の本質は「管理シェル」
    3.0の時代、つまり従来の製造業の世界は、ピラミッド型の階層構造になっていました。すべての機器が上の階層の端末にぶら下がる、樹形図型のネットワークでした。
    4.0の世界になると、生産システムのあらゆるコンポーネントが階層の垣根を越えてつながるようになります。必要な時に必要な機械やセンサーの情報を自由に取れるようになるのです。「管理シェル」は生産システムに関わるすべてのモノをインダストリー4.0の世界につなぐためのインターフェースになる標準化されたデータ形式で、インダストリー4.0の核心部分と言えます。
    ・スケールフリーネットワークを作る3つの方法
    ①アメリカ方式と呼んでいる方法で「お金を燃やす」やり方
    シリコンバレーでは、有望なスタートアップにはエンジェル投資家やVCなどの投資家から巨額の資金が集まってきます。そのお金を注ぎ込んで製品を開発しながら延々と製品をただで配り、大きなシェアを取ったところでマネタイズを考えるという方法です。
    ②欧州でよく見られる「デジュールスタンダード」の形
    市場競争の結果として事実上の業界標準となった規格を「デファクトスタンダード」と呼びますが、デジュールスタンダードは比較的、公的な意味合いを持ちます。何年もかけて関係者で話し合って規格を決め、それをIECやISOといった標準化団体に登録。その規格を世界に広めていくやり方です。①②ともに、おそらく世界のGDPの15%から20%を握っていないとうまくいかないでしょう。
    ③日本の採るべき戦略は「アセットオープン化」
    自社製品の一部アセットを先に開放し、あるいは仕様を公開して、誰でも接続可能にすることです。これこそ、多大なコストも時間もかけずにスケールフリーネットワークを作れる強力な手段なのです。
    製品やサービスをオープン化し、自社製品だけでなく、他社の製品やサービスも自由に接続できるようにします。そのメリットを享受するのはユーザーです。これまで連携が取れなかった機器やサービスが連携できるようになれば、ユーザーは喜んでさまざまな機器やサービスをつなぐでしょう。
    そうなると、ユーザーのニーズに応じて対応機器がどんどん投入されていくはずです。こうして自然とスケールフリーネットワークが出来上がり、成長を続けていきます。そして結果的に、公開した仕様はデファクトスタンダードになるのです。
    ・コモディティー化した技術は公開する
    オープン化戦略を採る上で、「どこまで手元に残し、何を公開するのか」は非常に重要です。場合によっては自社のビジネスを根本から破壊してしまいかねないため、慎重に検討する必要があります。
    その時判断基準になるのは、その技術が「コモディティー化しているかどうか」です。「他社でも作れる」、あるいは「誰が作っても大きな差がない」という技術は既にコモディティー化している可能性が高く、技術仕様を公開しても問題ないでしょう。
    一方、それが自社の競争力を生みだしているような独自技術であれば、すべてを公開すべきではありません。その場合は、例えば、SWとSWをつなぐ仕組みであるAPIを用意するなどの方法で外部との接続性を確保しつつ、核心部分はしっかり自社内でキープしておくべきでしょう。
    ・「スマートレシート」と「ifKink(イフリンク)」
    様々な分野でスケールフリーネットワークを生みだす取り組みを進めています。いずれもポイントは、ユーザーの視点に立って、現在の課題や不便な点をどう解決するか、と発想すること。ユーザーが自分で「つなぎたくなる」仕掛けさえ用意できていれば、それが「スケールフリーネットワーク・ジェネレーター」となり、ネットワークは拡大していくからです。
  3. アフターデジタルの世界で日本が持つ優位性
    ・フィジカルを舞台とした第2の戦いが始まる
    パソコンの時代はオンラインで注文してオフラインで受取るO2Oが中心でした。ところがスマートフォンの登場により、いつでもどこでもスマートフォンを取出してオンラインにつながるOMO、つまりオンラインとオフラインが融合した世界に変わってきています。
    これまで、このような細かいデータは取ることが難しく、取ったとしても使いきれませんでした。ところがスマートフォンとSNS、この二つが出現したことで、様々なリアルのデータが活用されるようになってきています。これはこの10年ほどで起こった大きな変化ですが、さらに重要なのは、今後20年間でさらに多くのリアルがデジタルで包まれるようになるということです。
    ・「選択と集中」の罠
    薄い利益率で中途半端に事業を続けるより、一番稼げるところに全力投球する。アメリカらしい合理的な考え方です。こうしてアメリカでは低付加価値事業の多くを国外に発注するようになり、国内には高付加価値の事業が残りました。日用品からパソコンまで、コモディティーとなった「モノ」の生産は中国や途上国へと流れ、現在、アメリカではソフトウェアやサービスが企業価値の中心を占めています。
    選択と集中には配置転換や人員整理が付きものですが、日本では、終身雇用制によって容易にリストラ出来ないこともあり、大胆な「選択と集中」はなかなか進みませんでした。その結果、多様なものづくりの技術が残ったのです。
    これから、あるゆる「モノ」がインターネットにつながり、ネットワークを形作って大きな価値を生み出す時代がやってきます。サイバー上だけのネットワークではなく、フィジカルな「モノ」が相互につながる、サイバーフィジカルの巨大なスケールフリーネットワークが誕生するはずです。そして、そのときこそ、多くの「ものづくり」が残された日本には大きなチャンスが到来するのです。
    ・「ノウフー(Know Who)」
    よくフラットな組織とかアジャイルな組織を目指そうなどといわれますが、上司や部下という縦のつながりとは違う、柔軟なネットワーク型の人間関係を持っている組織が強いのです。外資系のコンサルティング会社などは「ノウハウ(Knwo How)」ではなく「ノウフー(Know Who)」が重要だといって、人と人をつなぐような人事システムを推進しています。
  4. 日本がとるべきステップとは
    ・DXを成功させるには意識を変える必要がある
    イノベーションは、起こそうとして起こせるものではありません。一時期、日本でもオープンイノベーションという言葉がもてはやされました。スタートアップと大企業が手を組み、従来にはないイノベーションを起こそうどいう取組みが随所で広がりましたが、現時点でなかなかうまくいっていないのが現状です。
    理由は明白で、今走っている道の延長線上にイノベーションがあるわけではないからです。人やモノが集まる「場」を作り、何かが起こることを信じて待つ。すべてを自分で作り上げようとするのではなく、できるだけ多くの人を巻き込み、パーコレーションが起きるようなネタをどんどん仕込んでいくような動き方が重要になります。
    ・DXのための3ステップ
    (ステップ1:自社が目指すDXを定義する)
    デジタル化とともに、自社のビジネス範囲を再定義し、稼ぐポイントをずらしていく。それがDE(デジタルエボリューション)です。DEの段階を経て、次に来るのがDXです。DEは、ハードウェアの販売からサービスへの転換でした。私はよく「ハードウェアを売らないでください」と言うのですが、ハードウェアを売らずにサービスを買ってもらうようにするには、様々な工夫が必要です。ハードウェアよりもサービスを購入した方がお得である、便利であるといった明確な理由を作らなくてはなりません。DEを通してサービス提供を磨き上げることが、次のDXに生きてくるのです。
    (ステップ2:「自分ごと」として定着させる)
    ステップ1で自社にとってのDXを定義し、それを社内で共有したら、ステップ2は「定着」です。いくら言葉で説明され、頭で分かったとしても、それを「自分ごと」として行動や普段の業務、考え方に反映できるかは別問題。そこで社員たちに自分に置き換えて考えてもらう機会を作るのです。
    (ステップ3:全社に展開する)
    ・これから二回戦が始まる
    この20~30年を振り返ると、スケールフリーネットワークの力をいち早く利用した米国の一人勝ち状態で、日本もヨーロッパも守勢に回る一方でした。ところが、サイバーだけに閉じたスケールフリーネットワークはそろそろ飽和状態になりつつあります。次なる戦いの場となるのは、リアルな世界を舞台にしたスケールフリーネットワーク。サイバーとフィジカルをつないだネットワークです。サイバー上のデータが2割だとすれば、残りの8割のデータはいまだ手つかずのままフィジカルに閉じ込められています。
    これから始まる二回戦。フィジカルの資産がたくさん残された日本は、必ずや優位な立場に立つことができるでしょう。ただし、その強みを生かすためには開かれたネットワークを作ることが重要です。自社製品のうち、本当に大切なところはキープしながらも、接続部分は仕様をオープンにして他社の製品やサービスも含めて自由につながれるようにすること。参加者が多ければ多いほど、大きなネットワークが生まれるからです。そしてスケールフリーネットワークは、つながればつながるほど大きな価値が生まれます。
  5. 発想を転換できれば、日本にはチャンスがある
  6. 二回戦に向けて、日本企業が備えるべきこと

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