今日の日経新聞ピックアップ(2022/11/25)

  1. 政府、NISA口座を5年で倍に 上限額を拡大
    資産所得倍増プラン、成長投資促す

    ・政府が策定する資産所得倍増プランの案がわかった。少額投資非課税制度(NISA)の総口座数を今後5年間で3400万、投資額を56兆円にそれぞれ倍増する目標を掲げる。制度を恒久化し、非課税で保有できる期間を無期限にすることも盛る。運用収入で個人所得を増やしつつ、2000兆円の個人金融資産を成長投資に回す。
    ・25日に開く新しい資本主義実現会議の資産所得倍増分科会で示す。NISAの抜本的拡充を柱に「貯蓄から投資」の流れを促す。与党の税制調査会との協議を経て12月にまとめる2023年度税制改正大綱への明記を目指す。
    ・NISAは国内外の上場株などに幅広く投資できる一般型と、対象を投資信託に限ったつみたてNISAの2つがある。運用益に税金がかからずに口座を保有できる期間は一般が5年、つみたては20年となっている。
    ・途中で優遇措置がなくなる事態が懸念され、普及を阻む一因だった。この期間を無期限とすると明記した。家族構成や就職、子育てなどのライフステージに応じて柔軟に使える制度に改める。6月末時点で一般型とつみたての合計口座数は1703万、投資額は28兆円にとどまっている。
    投資上限額の拡大も明記する。一般型が120万円、つみたては40万円となっている年間枠を拡大する。富裕層に恩恵が偏るのを防ぐため、生涯の投資上限枠も設ける。
    ・現行では一般型を23年末に廃止し、つみたて型に投資した人だけが個別株に投資できる「2階建て」の制度に移行することになっている。制度が複雑になるため証券業界などが反対していた。今回のプラン案は2階建て制度への移行を見直すと記す。42年で廃止することになっていたつみたてNISAも恒久化する。
    ・NISA制度の恒久化をめぐっては、岸田文雄首相が9月に「必須だ」と表明していた。与党税調幹部には一般NISAについて証券会社が顧客に短期間に売り買いを繰り返させ、販売手数料を稼ぐのに使われているなどとして拡大に慎重な意見もある。
    個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)は65歳未満となっている加入可能な上限年齢を70歳まで引き上げる。24年に予定する公的年金の財政検証にあわせて法制上の措置を講じる。拠出限度額と受給開始年齢の引き上げも検討する。
    ・個人が投資しやすくする環境も整備する。投資助言や金融教育のための新しい公的な機関の設立が柱となる。日銀が事務局を務める金融広報中央委員会を移管・承継する機構を24年に設ける。
    ・証券会社などに属さない独立系の金融アドバイザー(IFA)を認定する役割などを担う。投資初心者への助言に特化した新制度も検討する。つみたてNISAやiDeCoに限定した投資助言業のライセンスをつくることを想定している。
  2. 火力発電の排出枠に課金
    「カーボンプライシング」巡り経産省案、化石燃料輸入にも負担

    経済産業省は二酸化炭素(CO2)の排出に負担を求める「カーボンプライシング」について火力発電への導入を検討する。企業間でCO2排出量を取引する市場に参加する大手電力会社などに2031年度以降、負担を求めると想定する。電力会社などが払うお金は政府による脱炭素支援の財源とする。一連の施策で温暖化ガスの排出削減を促す。
    ・政府は50年に温暖化ガス排出量を実質ゼロとするため、企業による脱炭素投資を支援する新たな国債「GX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債(仮称)」を発行して計20兆円規模を集める予定だ。カーボンプライシングはGX債の償還財源となる。
    ・岸田文雄首相は10月に開いた官邸のGX実行会議で「具体的な制度案を提示してもらいたい」と指示し、経産省などが制度設計を進めていた。11月末にも開くGX実行会議で首相に成案を示し、年内のとりまとめをめざす。
    ・24日に開いた審議会で経産省は、カーボンプライシングで2つの手法案を提示した。一つが排出量取引で、発電部門にCO2の排出枠を買い取らせる同日の資料では「発電部門への段階的な有償化導入を検討してはどうか」と明記し、イメージとして31年度以降に導入するとした。
    石炭や天然ガス、石油を燃料に使う火力発電所からCO2が出るため、火力発電に負担を求める。環境省によると20年度の日本のCO2排出量のうち発電由来は4割ほどを占める。欧州の排出量取引市場では発電部門に対し排出枠を有償で買い取らせている。
    ・カーボンプライシングに関するもう一つの仕組みが賦課金だ。経産省は同日、化石燃料の輸入企業などに導入する案を示した。CO2の排出源となる化石燃料からの転換を促す。電力・ガス・石油元売り・商社などが想定される。
    ・カーボンプライシングを導入することで、電力会社などの負担は最終的な製品やサービスの価格に転嫁されることになる。経産省は制度導入で国民負担が急増しないようにする。
    ・現状でも企業などはエネルギーに関連する税や賦課金を支払っている。石油石炭税や、再生可能エネルギーの発電を促すために電気料金に上乗せされる賦課金が代表的だ。
    ・石油石炭税は脱炭素化が進むことで今後、税負担が減ると見込まれる。再生エネの賦課金も普及を急いだ東日本大震災の直後から20年間は賦課金の負担が重いが、32年度以降は負担が軽くなっていく。経産省は既存の税や負担の減少に入れ替わる形で新たにカーボンプライシングを段階的に導入する方針だ
    ・電力部門の脱炭素化が進んでも、鉄鋼や化学といった多排出産業でどのように排出削減を促すかは課題となる。運輸部門も電力に由来しないCO2を排出する。

    日本ではまだカーボンプライシングが本格的に導入されていない。EUの排出量取引は大規模に排出する企業などに参加を義務付ける規制として制度化している。フランスや英国では参加義務のない企業を対象に炭素税を課して公平性を高めている。日本の排出量取引は自主参加のため、排出量が多いのに市場に参加しないといった抜け道もあり、賦課金の導入が欠かせない。
  3. 三菱商事系、洋上風力の環境アセス中止
    秋田県沖、応札見送りか

    ・政府が年内にも公募する秋田県八峰町、能代市沖の洋上風力プロジェクトで、三菱商事のグループ会社が事前に行う環境アセスメント(影響評価)の中止を決めたことが24日、わかった。事前の環境アセスは事業者選びで有利に働くとされ、三菱商事は応札を見送る可能性が高い。
    ・三菱商事洋上風力(東京・千代田)が官報で公告した。同プロジェクトは三菱商事が2021年12月に落札した案件に続く、第2弾の大規模な洋上風力プロジェクトの4海域に含まれており、三菱商事洋上風力が環境アセスの手続きをしていた。環境アセスをする企業が必ず入札に参加するわけではないが、有力候補になり得るという。
    第1弾は千葉県銚子市沖などで入札が行われた。三菱商事の企業連合が売電価格の安さなどが評価されて、3海域を総取りした。出力で計約170万キロワット規模にのぼる。
    第1弾の後、政府は入札ルールを見直す協議を始めた。価格は重要な評価基準のままだが、発電開始の時期が早いほどより有利になったり、公募時期によっては同一企業が落札できる発電規模に上限を設けたりする変更を加える方針。三菱商事洋上風力はこうした変更方針を踏まえて判断したとみられる。
    ・三菱商事は「公募占用指針の趣旨にかんがみ、個別案件についてコメントは差し控える」としている。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です