今日の日経新聞ピックアップ(2022/11/20)
- FTX株主、監視甘く 取締役派遣せず 統治不全の一因か
・暗号資産(仮想通貨)交換業大手のFTXトレーディングが経営破綻した問題で、ずさんな企業統治(ガバナンス)を見抜けなかった投資家の姿勢が問われている。ベンチャーキャピタル(VC)など主な株主はFTXに取締役を派遣しておらず統治不全を招いたとの見方がある。新型コロナウイルス下の金融緩和でマネーが仮想通貨に流れ込み、投資に乗り遅れないために調査が甘くなった可能性も指摘される。
・「すべての損失を真摯に受け止め、今回の経験を生かしていく」。カナダ・オンタリオ州の教員向け年金基金は17日、FTXに投じた9500万ドル(約133億円)の評価額をゼロにすると発表した。調査会社ピッチブックによるとFTXには70以上の投資家が20億ドル近くを投じてきた。既に米大手VCのセコイア・キャピタルが関連持ち分の評価をゼロにするなど影響は広がり続けている。
・オンタリオ州の年金基金はVCを通じてFTXに資金を投じていた。VCは資金を出すだけでなく投資先に取締役を派遣し、脆弱なガバナンスを改善するなどの役割を担う場合がある。QUICK・ファクトセットによると、米サード・ポイントやソフトバンクグループ、有力VCなど約40社のうち、取締役を送り込んだ投資家は1社もいなかった。社外の監視の目が届かずFTXのずさんな経営につながった可能性がある。
・「よく調べたが十分ではなかった」。仮想通貨関連のVC大手でFTXグループと資本提携していたスカイブリッジ・キャピタル創業者のアンソニー・スカラムッチ氏は15日、シンガポールのイベントでFTXの前最高経営責任者(CEO)のサム・バンクマン・フリード氏についてこう述べた。
・別の有力VC、パラダイムのマット・ファン共同創業者はツイッターでFTXへの出資を「深く後悔している」と述べると、他の投稿者から「あなたたちの投資で一般ユーザーも詐欺を信じてしまった」と批判された。
・「普通なら取締役かせめて監査役や顧問が送り込まれるはずだ」(仮想通貨交換業のコインチェックを子会社に持つマネックスグループの松本大CEO)。だがコロナ下のカネ余りで昨年、世界の仮想通貨の時価総額が3兆ドルを突破した。FTXにも世界の名だたる投資家が列をなした。「仮想通貨関連ではVC間の競争が激しく、ガバナンス強化を求める交渉ができなかったのではないか」(シンガポールのVC、アリーバスタジオの佐藤崇CEO)との見方がある。
・米JPモルガンによると、2021年の仮想通貨・ブロックチェーン関連のスタートアップに対するVC投資は324億ドルと前年の約5倍に膨らんだ。22年も11月中旬時点で250億ドルを超える。FTX以外にも危機の芽が潜んでいるリスクはある。