今日の日経新聞ピックアップ(2022/10/27)

  1. 迫真冬のスタートアップ4 厳しさに耐え芽いぶく
    ・「動画にすぐにコメントを入れて応援するのは楽しい」。10月、茨城県に住む大学1年生の小林大起は、VTuber(バーチャルユーチューバー)、葛葉(くずは)の生配信動画にくぎ付けになった。ユーチューブの登録者数が100万人を超える人気で、小林は「距離の近さにひかれた」と目を輝かせる。
    このVTuberが所属するANYCOLOR(エニーカラー)は、6月に東証グロースに上場した。26日時点の時価総額は約3600億円と、新規上場で今年最大だ。冬の時代でも新たな需要を開拓すれば、高く評価されることをみせつけた。
    ・「ライブ配信では同時接続者が20万人を超えた」。競合のカバー(東京・千代田)社長の谷郷元昭も手応えを感じる。約70人のVTuberを抱え、動画のチャンネル登録者は7000万アカウントを超える。英語やインドネシア語での動画配信にも乗り出し、エニーカラーに続けとばかりに事業展開を急ぐ。
    ・厳しい時代でも新事業に挑む起業家は相次ぐ。「自動運転のプラットフォームになる」。自動運転ソフトを手掛けるティアフォー(名古屋市)創業者の加藤真平は、自動車メーカーと走行データの収集に汗を流す。
    ・「オープンソースで造ろうと思う。一緒にやれないか」。2020年、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業本社に招かれた加藤は、劉揚偉董事長(会長)に打ち明けられた。その数週間後、自動車の基本ソフト(OS)に採用された。加藤の挑戦は、巨大企業の成長のカギを握る。
    ・「ぜひ契約させてくれ」。ESG(環境・社会・企業統治)などの非財務情報のデータベースを運営するサステナブル・ラボ(東京・千代田)に問い合わせが相次ぐ。最高経営責任者(CEO)の平瀬錬司は「10年前は変人扱いされていた」。ESG投資の波に乗り攻めに出る。
    ・世界経済は景気後退の瀬戸際にある。資金が乏しいスタートアップはひときわ苦しい。だが、ベンチャーキャピタルのグローバル・ブレイン社長、百合本安彦は「厳しい時期こそ、自分を磨き上げる好機」とみる。
    インターネットバブルの崩壊などを乗り越えたスタートアップは飛躍してきた。自らを鍛え、イノベーションを生み続ける企業が、冬の時代が終えた後の勝者となる。

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