「渋沢栄一とドラッカー 未来創造の方法論」

中小企業診断士試験の事例Ⅳの苦手意識が払しょくできたのは、國貞克則氏が「財務3表」シリーズ3部作で判り易く解説してくれたお陰です。氏はピーター・ドラッカー経営大学院でMBA取得するなどドラッカーへの見識も深く、「究極のドラッカー」「現場のドラッカー」も読みました。この本は新型コロナウイルスが広がり始めた頃に書かれた本で現在の大きな変化の時代を見据えた未来創造について書かれています。

  1. 物事の本質がわかれば何をすべきかが見えてくる
    1)現在の大変化の本質は何か
    2)事業の本質としての「顧客」と「知識」
    3)顧客を知り尽くすための「分析」と「知覚」
    4)知識の生産性を高めるための「結合」
    ・ドラッカーの戦略論の重要なポイントは、「顧客が事業である」、「知識が事業である」ということだった。
    ・成果をあげるために知識は専門化した。ゆえに現代の知識労働者の知識は狭い範囲となり、知らないことのほうが多くなった。しかし、新しい洞察は全く別の専門分野、別の専門知識から生まれる。だからこそ、専門分野を超えた結合が極めて重要な時代になったのだ。
    5)古いものの上に新しいものを乗せて一体化する独創性
    ・日本人は過去を否定せず、古いものの上に新しいものを乗せて一体化し、独自なものを生み出してきた。そして、この日本人の伝統的な特性は、これからの未来創造のための武器になるのだ。
    6)改革の原理としての正当保守主義(持っている強みを活かす)
    ・イノベーションにおいても強みを活かすことが極めて重要になる。ドラッカーは次のように言う。「イノベーションほど、自らの強みを基盤とすることが重要なものはない。イノベーションにおいては、知識と能力の果たす役割が大きく、しかもリスクが伴うからである」
    <まとめ>
    ・いまの変化は継続的な変化ではなく、数百年に一度の非連続の変化である。しかし、時代が変化しようとも変わらない事業の本質がある。それは「顧客が事業である」「知識が事業である」ということだ。
    ・その顧客を知り尽くし社会の変化を読み解くには、「分析」と同時に「知覚」が必要だ。また知識は専門化する。専門化した知識から新しいものを生み出すには「結合」が必要である。
    ・日本人は古いものの上に新しいものを乗せて一体化し独創的なものを生み出してきた。新しいものを生み出すには「もっている強み」を活かす必要がある。
    ・そして、未来創造のために大切になる「知覚」「結合・一体化」といった能力が、私たち日本人が伝統的に「持っている強み」なのだ。
  2. 未来創造の方法論
    1)すでに起こった事象の未来への影響を先取りする
    2)アイデアを事業の中で実現する
    ・事業化にとっての未来への問いは、「未来の社会はどのようになるべきか」といった革命家や哲学者の問いではなく、「経済、市場、知識におけるいかなる変化が、わが社の望む事業を可能とし、最大の経済的成果を得る経営を可能にするか」という問いでなければならないとドラッガーは言う。事業家とは、革命家でも哲学者でも慈善家でもなく、事業の経済的成果に責任を持つ者なのだ。顧客が喜んでお金を払ってくれるような商品やサービスを提供できなければ、事業家としては失敗である。
    ・アップルの元副社長だったアリソン・ジョンソンによれば、スティーブ・ジョブスは「マーケティング」という言葉を嫌い、次のように述べていたという。「顧客が望むものを提供しろという人がいる。だが、私の考えは違う。顧客が今後、何を望むようになるのか、それを顧客本人よりも早くつかむのが我々の仕事なんだ」
    3)イノベーションの機会を探す7つの領域
    ・ドラッカーは『イノベーションと企業家精神』で、その体系的な方法を示した。キーワードは「変化の中に機会がある」「変化を機会として利用せよ」である。
    ・ドラッカーは「予期せざるもの」に関して次のように言う。「予期せざる成功や失敗はすべて、イノベーションの機会として取り上げ、分析しなけらばならない。しかし、単に分析するだけでは不十分である。外に出かけていき、よく見、よく聞くことが必要にして不可欠である。(中略)イノベーションとは、概念よりも知覚の活動である。(中略)『分析を行えるほどにはまだわかっていない。だから調べよう。出かけて行って、見て、質問して、聞いてくることにしよう』と言わなければならいということである」
    4)未来創造の前にやっとくべきこと
  3. 未来創造のための実践
    1)多種多様な経験が価値を生む
    ・人間の経験というものは、意図的に経験するものもあれば偶然のものもある。これまで述べてきたように、何も知らない人間は現場から気づかせてもらうことが多い。小さな失敗からは小さな気づきが、大きな失敗からは大きな気づきがある。さらに人間には出会いがある。貴重な出会いは多くの場合偶然だ。どういった経験や出会いから学んだことがやがてつながっていき、新しいものの創造に結びついていく。
    2)決定的に重要なのは実行である
    3)必ず訪れる厳しい局面
    4)自分の歩む道を定める
    5)ドラッカー流の未来創造の方法論を著者は実践しているのか
    ・私は仕事をする上で、「全体像とその本質」を常に意識している。私は、財務3表が事業の基本活動である『お金を集める』⇒『投資する』⇒『利益をあげる』ということを表しているという会計の全体像を示した。私はドラッカーの言う「森と木の両方を見る」ということも常に心がけている。「財務3表一体理解法」は、PL、BS、CSという財務3表を「結合」すると共に、会計の全体像という「森」と、伝票の仕訳という「木」を結合した。

    ドラッカーは、現代の知識労働者の忠誠は、組織にではなく「自らの専門分野にある」という。つまり、自らの専門分野で成果と自己表現が期待できるのであれば、知識労働者は企業、大学、政府機関のどこででも働く。そういう知識社会において社会として成果をあげるには、雇用の流動性が重要になる。

    知識社会の代表としての「教育ある人間」とはどういう人なのでしょうか。知識社会における「教育ある人間」に影響を与えるのは、「専門性」と「グローバル化」であり、そこから導き出させるキーワードは「結合の力」と「普遍性」です。

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