今日の日経新聞ピックアップ(2022/9/16)

  1. 脱炭素への移行に資金の好循環確立を
    ・脱炭素社会を実現するためには、クリーンエネルギーを使った発電を増やすだけでなく、製鉄など二酸化炭素(CO2)を多く出す産業の排出抑制がどうしても必要だ。多額の資金も投じなければならない。国や企業、個人のお金を脱炭素社会への移行に回す仕組みを整えたい。
    ・政府の見通しでは、2050年に温暖化ガス排出実質ゼロを目指すうえで、今後10年間で官民あわせて150兆円の投資が必要となる。再生可能エネルギーの普及や蓄電池の開発などを成長戦略と位置づけ、有効なお金の使い方を検討する必要がある。
    採算が不透明で民間が負いにくい投資のリスクは、まずは国が引き受け、民間資金の呼び水としての役割を果たすべきだ。新たな国債の発行も選択肢のひとつとなる。償還財源を確保するためにも、CO2に値付けするカーボンプライシングの議論に早く結論を出し、実行してほしい。
    ・国が先導するとはいえ、技術の評価や商用化は、民間に委ねたほうが効率的に進む。150兆円の多くの部分は、企業や個人のお金で賄う必要がある。
    手元に300兆円の現金・預金を持つ日本企業は、かねて株主から投資を増やすよう求められてきた。今こそ経営者は脱炭素戦略を具体的に示し、実行への手立てを株主と協議すべきだ。
    ・企業が排出抑制を進めるには、機動的な資金調達も必要だ。銀行は融資に機動的に応じる体制を整えるべきだ。資産運用会社も、企業が脱炭素に必要な資金を調達するための債券を投資対象として検討してほしい。
    ・2000兆円の個人金融資産も、脱炭素を後押しする力となりうる。岸田文雄首相は、少額投資非課税制度(NISA)の拡充に取り組む方針だ。目先の議論の中心は制度の簡素化や株式投資枠の拡大だが、脱炭素移行を目的とするさまざまな債券を対象に加えることも、一案ではないか。
    ・こうした「移行金融」を根づかせるために、銀行や運用会社が脱炭素技術を評価するための専門性を高めることが欠かせない。個人も含め、地球温暖化の深刻さを改めて認識すべきだ。
    日本が「移行金融」の取り組みを強めれば、国際的な注目が増し、外からの投資も呼び込める。それを技術開発に生かすなど資金の好循環を確立したい。
  2. 石炭火力のCO2、建材や燃料に 広島に産学官の研究拠点
    ・排出すれば温暖化ガスとなる二酸化炭素(CO2)の有効活用を探る産学官の研究拠点が広島県内に完成した。コンクリートや航空機用燃料など10分野の研究テーマごとに企業や大学が参画する。CO2のリサイクルは2050年の脱炭素目標の達成に欠かせないため、技術の確立を急ぐ。
    ・経済産業省所管の国立研究開発法人、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が瀬戸内海の大崎上島町に整備した。CO2は隣接する中国電力とJパワーの石炭火力発電所から回収し、パイプラインで供給する。
    ・地元の日本微細藻類技術協会は、藻類の光合成によって航空機の燃料をつくる技術開発を進める。CO2を原料にする分だけ飛行時の排出を相殺できる。
    ・持続可能な航空燃料は英語表記の略称で「SAF」と呼ぶ。現状は化石燃料由来のジェット燃料より10倍以上も高いとされる。協会の青木慎一主任研究員は「いかにコストを下げるかが課題だ」と話す。
    ・東京大学発スタートアップのアルガルバイオ(千葉県柏市)は同様に藻類から健康食品向けの成分を取りだし、残った部分を原料にペットボトルなどを作る構想だ。中国電力と鹿島、三菱商事はCO2を封入したコンクリートの研究開発を進める。
    ・脱炭素をめざす場合、鉄鋼や化学、電力といったCO2の排出量をゼロにするのが難しい分野の取り組みがカギを握る。排出が避けられない分を再利用するカーボンリサイクルは技術革 新の期待が大きい。世界でも競争が激しくなっている。経産省はSAFについては30年ごろ、コンクリート製品は40年ごろからの普及をめざす。

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