「STARTUP 優れた起業家は何を考え、どう行動したか」
この本は最近読んだ本の中でも「一番リアルで且つ実践的な内容」で、沢山の発見がありました!
- アイデアを見つける
・いいアイデアとは何か
1.誰の何の課題を解決しているのか
(ターゲット顧客は誰か。どうニーズを満たし、ペインポイントを解決するのか)
2.スケール出来るのか
(十分な市場規模があり、大きな事業規模を見込めるのか)
3.既存のサービスに置き換わる新しいサービスか
(差別化、競争優位性があるのか)
4.ビジネスとして成立するのか
(収支が合うか。KSFを理解できているか)
5.数年後により多くの人に使われるサービスか
(将来性があるのか)
・不確実性の高い領域こそ起業家が進化を発揮する
新しい技術・事業領域は競合が少ない。
大企業は、新しい事業領域については立ち上がるか半信半疑なため、ビジネスの情報戦で出遅れることがある。不確実性の高い状況であればあるほど、信念を持って挑戦できる起業家の真価が発揮できるのだ。
これからやってくる市場を選定することは、起業家にとって最大のチャンスといってもいい。絶えず情報収集のアンテナを張り巡らせ、事業アイデアを練り込み、波が来たら乗れる準備をしておくことだ。ただし、その瞬間に事業資金が底をついていれば、波に乗ることは当然できない。だからこそ、「確実にくる未来までなんとかする力」が重要になる。
アイデアを探し求める作業は、紆余曲折の連続だ。一番最初に思いついたアイデアのまま、大成功を収めた起業家は珍しい。
多くの場合ファーストアイデアは失敗に終わり、苦闘を続ける中でようやく、心から信じることのできる事業アイデアが生まれる。
・新規事業で大切なのは「課題」の抽出
「ヒアリングしても、人によって見えるアングルは違います。でもそこに正解不正解はなくて、アングルを多面的に捉えた上で、自分の中でイメージを固めていくしかない。」 - 最初の仲間を見つける
・自分より優秀な人を採用できるか
「Aクラスの人材はAクラスの人材を連れてきて、BクラスはCクラスを、CクラスはDクラスを連れてくる」というスティーブ・ジョブスの残した有名な金言。優秀な人材は優秀な人材を連れてくるが、そうでない人材は自分より下の人材を連れてくる。
・初期のチームに必要な4つの要素
1.必要最小限のチームで始める
2.カルチャーフィットを優先する
3.社長が雑用役を引き受ける
4.社長が松明をかざす
・お金をかけずにいいメンバーを集めるには
1.幅広いタッチポイント/出会いの機会を作る
2.アクションを繰り返す
3.現在のみならず、未来を意識する
4.結果が出るまで徹底する
5.第三者のレファレンスを取る
6.仕組み化するーリファラル採用のノウハウを全社で共有する
・バリューの言葉を会議室の名前にしたり、Go Boldと書いたTシャツを作るなど、社員がつい口に出していまう環境を作り出すことによって、ミッション・バリューの浸透を目指した。「僕はこれを『明るい宗教』と呼んでいます。『朝、全員で社訓を唱和します』みたいな、強制感がある形だと多分みんな言わないんですよ。だから会議室をバリューの名前にしちゃって、『会議、どこであるの?』『Bold,Bold』などのように、自然に言葉がが刷り込まれていく仕掛けをたくさん作った。やはり、宗教には目で見て、口に出すみたいなプロセスが重要なので、これを強制力がない形で作っていく感じでした」
・目指すは反脆い組織
創業期から自ら採用の現場に立ち、ストーリーを伝え続けてきた。そして、事業・ミッションに共感する人材を集め、心理的安全性が担保された環境を構築するため、日々模索しながらさまざまな施策を講じているのである。 - プロタクトを作りユーザー検証する
・顧客の「声」ではなく「行動」にヒントがある
顧客の声はアイデアを創出する際のきっかけとしては活躍するが、アイデアの検証には役立たない。
アイデアの検証時に見極めなくてはいけないなにより重要なポイントは、実際にお金を払ってプロダクトを購入したり、サービスを利用してくれるかどうかの「課金ポイント」。そして既存プロダクトやサービスに戻らず、新しい自社のプロダクト・サービスを使い続けてくれるかどうかの「リピートポイント」だ。
・ピボット・撤退判断は自分でする
「いつお金が尽きるか、をまず逆算しました。売上が一切入らないと仮定して、毎月のチームメンバーの生活費がから導かれる必要コストを最初に算出すると、9か月先まで生き残れる。一つのアイデアを考えて、MVPを作って検証を実施するサイクルが3ヶ月。だから、9か月間だと3回チャレンジができるな、と。3回やって一つも当たらなかったら解散するしかないと頭の片隅で考えていました」
・継続率、ライフタイムバリュー
「一番重要なのは、『ユーザーが必要としているかどうか』を検証することです。たとえば、デザインを2つ見せたりアルゴリズムを変えて見せて『どっちがいいですか?』って聞いても、ユーザーはわからないんですよ。それはもう、統計的に判断するしかない。ユーザーが必要としているかとうか、というのはユーザーの声よりも、むしろ行動にすべて現れるので」
「ユーザーに欲しいものを聞こうという感覚は全くないです。ユーザーが欲しいものは自分で考えるので。逆に『10分余ったときに、何のアプリ見ます?』とか『こういうとき、どういう行動してますか?』とかユーザーが実際に何をしているかは聞いたりしますね。そこにサービスのヒントが隠れていたりします」
「過去にいくつかサービスを出したのですが、いけるかいけないかは初日でわかります。『あ、これは求められてないな』『自分が間違ってるんだな』と。この感覚は大事にしています」
・ユーザーの隠れた欲求
「当時はインタビューも体系的に洗練されていなかったので、『これを欲しいか』みたいな曖昧な質問が多かったですね。今だから、普段どういう行動をしているのかなど、客観的な事実を深ぼって、そこからプロダクトを作ります」
「ユーザーテストのときは、ユーザーからの言葉通りに直すのではなく、その引っかかりは本質的にどのような欲求と結び付いているのかを考えながら作り込んでいきました」
「アイデアの検証は、僕自身が他人の行動の中からふと感じたペインやインサイトが、本当の課題なのかどうかを客観的事実を聞きながら埋めていって、自分ならもっといいものが作れるかを考えます。『こういう人が使ってくれるだろうな』と具体的な一人をイメージしながら作っていることが多いので、プロダクトマーケットフィットの検証もその人たちに見せたり、実際にリリースしてその人たちが他の代替手段から乗り換えてくれるかを観察しますね」 - ユーザーを獲得する
・マーケットコスト削減ー1円でも安く顧客を獲得するには
CAC(顧客一人あたりの獲得単価)を下げる方法は3つに分類される。
1.ターゲット顧客に限定したアプローチを探す
2.Non-Paidを活用する
3.誰も気づいていない獲得方法を発見・発明するーさまざまなチャレンジを続けていく中で見つけたのが、ロングテール・キーワードのSEOだった。
・商品力向上
1.機能改善ーユーザーの求める根源的な価値を提供できているか?
2.機能拡充ーリーチを増やせるユーザーペイン(顧客課題)は無いか?
・口コミによる普及
利便性が高いプロダクトを作ることによって、結果として営業をかけることなく店舗間でも口コミで広がっていったのだ。
・キャッシュエンジンとトラフィックエンジン
当時成功していた他企業の動向を分析し、自分たちもマネタイズ用と集客用のアプリを分けて出した方がいいのではないかと考えていた。
「当時は、僕はこれを『キャッシュエンジン』と『トラフィックエンジン』と呼び、この両軸を持っている企業が一番強いと考えていました。だから『キャッシュエンジン』として継続課金や高ARPUが取れそうなマッチングアプリを置き、『トラフィックエンジン』としてFacebook上に無料アプリを作っていったんです。『トラフィックエンジン』側でユーザープールを作ることができれば、広告宣伝費を下げられるなと」
・ユーザー中心のプロダクト改善
ユーザー獲得の文脈において、広告宣伝などのマーケティングは非常に重要となる。しかしその一方で、プロダクトの使いやすさ、いわゆるUI/UXを改善し続けることもまた、新規ユーザーの獲得、既存ユーザーの継続利用に大きな影響を与える。マーケティングだけでなく、ユーザーの行動から得られるデータをもとに、アプリの改善を繰り返しと言う。
・プロダクトとマーケティングの両輪を回す
「事業はよくクルマに喩えられます。プロダクトとマーケティングが両輪で、ハンドルを持っているのが人、マネジメントチームです。そしてファイナンスはガソリン。ないとクルマが走らない」 - 資金を調達する
・初めての資金調達は1000万円前後が一般的
アイデアを絞りだし、プロダクト・サービスのプロトタイプを開発し、ユーザー検証を進め、プロダクトマーケットフィットを完了させる。この一連の作業を行うまでに必要な資金を株式で調達することをシードラウンドと呼ぶ。
シードラウンドに特化しているベンチャーキャピタルによれば、出資額は1000万円前後で、出資時のバリュエーションは1億円が一般的だ。
この1000万円は、プロダクトマーケットフィットにチャレンジするための資金提供と位置づけられている。構想レベルのプロダクトを検証するまでにかかる期間は、一般的に3ヶ月とするケースが多い。人件費、家賃、光熱費、通信費、開発端末のコストを考えると1ヵ月にかかるコストはだいたい60万円。すると、シードVC約15カ月分、すなわち5回のプロダクト検証にチャレンジするための資金をアシストしてくれているとも読み取れる。
・投資家に何を伝えるべきか
1.市場
(自社の狙う市場の規模・成長率・ベンチマークとなる企業は?)
2.課題
(この市場の未解決な大きな課題は?)
3.解決策・プロダクツ
(その課題をどう解決するか?)
4.競合優位性・差別化
(その課題を解決する他のソリューションに比べて、どう優れているか?)
5.ビジネスモデル
(自社のソリューションのヒト・モノ・カネの流れ&収益構造は?)
6.トラクション
(実際のプロダクトの財務実績・KPI実績は?)
7.事業計画
(どのような計画で成長してどのような規模になるのか?)
8.資金
(その計画を達成するために必要な資金量・資金用途は?)
9.チーム
(なぜ自社のチームが成功できるのか?)
・プロダクトよりも「人」
「一つ学んだのは『ネットワークがないと無理なんだ』ということです。僕はヤフー出身なので、A社側にネットワークが何もないんですよ。つまり、僕のことを評価できる人がA社側には誰もいなかった。やはりシードになればなるほど、プロダクトよりもその人が信用に値するか、努力するかという『人』の部分を見るなと思ったんです」
・株主からの事業支援
「最初に必要なことって、戦略など会社の大きな方向性に関するアドバイスなどではなく、もっと目の前の、そしてリアルな課題解決なんですよ。それが我々にとっては『SPEEDAを売る先を紹介してもらうこと』だった。自分たちがつながれないような人たちと会わせてくれて、本当に助かりました」
・投資家の判断基準(クラシル by dely v.s. クックパッド)
1.市場
<レシピ市場にはすでにクックパッドなどのプレイヤーが存在し、市場は存在していた。
2.課題
<クックパッドが存在していることから、「今日の夜、何を作ればいいかわからない」など、レシピに関する課題を持った人々が存在することはすでに証明されていた。しかし、調理する際にテキストと画像だけでは伝わり難い、という課題が存在していた。
3.解決策
<2.の課題に対し、従来はテキスト、写真のサービスが主流であった。クラシルは動画レシピに注力し、よりわかりやすいユーザー体験をアプリで提供することで課題解決を図る。
4.競合優位性
<対クックパッド。コンテンツ面…クックパッドはCGM(Consumer Generated Media)の形態を取る。約270万レシピを有していたが、実際にトラフィックが集まるコンテンツはその内1~5%。クラシルはCGMではなく、クオリティの高いコンテンツを内製することによって、クックパッドを代替する。具体的には、1日に50本の動画を制作できる体制を構築し、3年以内にクックパッドのトラフィックが集中するレシピ数と並ぶことを目指す。ユーザー獲得面…クックパッドは主にSEOによってユーザーを獲得している。しかし、Facebook,TwitterなどのSNSが普及してきている状況を鑑みると、今後は動画広告がユーザーエンゲージメントを高める可能性が高い。クラシルは動画でのユーザー獲得に注力し、クックパッドを超える。
<対レシピ動画メディア。当時、すでに国内にはTastyやDELISH KITCHENなどのレシピ動画メディアが存在し、一定のトラクションを獲得していた。しかし、彼らは動画制作を外注しており、ここにコストがかかっていた。クラシルでは動画制作をすべて内製化することにより、競合と比較して1本あたり5分の1程のコストで製作することに成功。低コスト化により、より多くの施策を打つことが可能になる。
5.ビジネスモデル
<収益源として想定しているのは、クックパッドと同じく会員費(月額課金)、広告事業、自社ECの3つ。まずはユーザー数においてたサービスを上回ることを優先し、資金調達を終えた後に本格的にマネタイズしていく予定。
6.トラクション
<クラシルをリリースして半年で50万ダウンロードを達成。MAU、WAU、DAU、リピート率、CPIなどの数字も申し分なく、すでに、AppStoreランキングにおいてトップ20にランクインしている。
7.事業計画
<マネタイズに関してはまだほとんど実現できていない。しかし、ユーザーを獲得することができれば、クックパッドと同じモデルでマネタイズすることができる。
8.資金
<当時、すでにDELISH KITCHENなどの料理動画メディアが存在し、クックパッドも料理動画への参入を宣言していた。競合が差し迫っている中、これを引き離すための打ち手としてTVCMを計画しており、そのために数億円の資金調達を行う必要がある。
9.チーム
<略 - 起業するということ
・なぜ企業するかよりも「最初の一歩」が重要
・「起業のリスク」なんて無い
・企業経験者が重宝される時代になる