「シリコンバレーのVC=ベンチャーキャピタリストは何を見ているのか」

  • 最終的に判断するのは人物と熱意
    投資をするにあたっては、もちろんビジネスやテクノロジーも重要ですが、最終的には、起業家その人を見ることが最も重要になります。
    私がシンプルに意識しているのは、10年先もこの人は同じことをしているか、ということです。
  • ピボットできる柔軟性があるか
    起業家として重要な資質に柔軟性があると私は考えています。企業というものは未来へと一直線に進んでいくものではないのです。だいたいカーブが待ち構えている。だから、どこかで何度も曲がらないといけなくなる。
    ベンチャーの世界でよく使われるコトバでいえば、ピボットです。
    ここで大事なのは何を軸足とするかです。何でもすべて変えてしまっては単に方向性を失ってしまい混乱するだけです。
    そしてこのピボットをしなければならないタイミングが、往々にしてやってくるものなのです。
    この時プライドの高すぎる人は、自分の正しさを信じることに拘りすぎ、周囲の意見を受け入れることが難しいことがあります。愛嬌のある人は、苦しい状況であっても、人間関係を壊さずに周囲に教えを請うことができる。もっといえば、自分より賢い人を雇うことができるのです。
  • 投資先は見られている。誰が投資したかも見られている。
    実のところベンチャーキャピタルやベンチャー投資というのは、お金さえあれば「やります」といって誰でも出来てしまうものです。参入障壁が低いビジネスです。
    評判のよくない会社や投資家から投資をうけてしまうと、受けたベンチャー企業の側が評価を下げてしまうようなことが起こりえます。どうしてあんな会社から、あんな投資家から投資を受けたのか、と問われてしまうのです。
    ですから、知名度や信用がないベンチャーキャピタルや投資家には、投資の案件がやってこない。それがシリコンバレーの投資の現実なのです。
    投資家やベンチャーキャピタルとベンチャー企業の関係は、男女の恋愛関係によく似ています。一度、付き合ってしまうと、元カレ、元カノはずっとついて回る。評判はいつも周囲に広がる。そして、どうやって出会ったか、も問われることになります。
    有望なベンチャーに出会いたいからと、コンテストを開いたりする会社があります。そして上位に入った会社に「投資させてください」と行く。しかし、これは恋愛にたとえてみると、ミスコンテスト、ミスターコンテストを開いて、その上位に入った人に「お金があるので付き合ってください」と言っているようなものです。いったい自分は誰なのか、何者なのか、相手はわからないのに、です。お金だけはあると認識されたとしても、これでは本当の相性がわかって付き合うことには遠いのです。
  • 日本のコーポレートベンチャーキャピタルの危うさ
    事業会社が自己資金でスタートアップ企業などへの投資を行う、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)が世界中で拡大しています。
    CVCは、投資益よりも質のよい新しい情報や技術の本業への取り込みに期待する狙いがあります。スタートアップ企業への投資を通じて、ビジネスの最新情報を得たい、協業したい、優秀な人材を招聘したい、などの目的が中心です。
    企業本体の経営とは切り離し、ファンドの形式をとることがほとんどです。それだけに投資の決定も迅速にできるメリットがあります。これはスタートアップ企業にとっても、事業拡大のためのスピード感ある資金調達につながります。
    日本企業でも、CVCが拡大しています。自分たちの本業がいつ、どこから浸食されるか判らないような状況の中で、うまくいけば協業、さらには買収も目的として、投資によるリターンというよりも、新しい技術や優秀な人材を獲得するためにCVCを活用しようとしています。
  • ハードウェア x ソフトウェア x サービスモデル = 顧客満足
    利益が稼げるのはソフトウェアとサービスの組合せ
    ソフトウェアの強さは、一度作ると大量生産が可能なことです。追加コストゼロ、限界利益ゼロ。だから、規模が大きくなっても利益率が高く維持できます。
    「付加価値は、販売した後からつけることができる」
    これまでのハードウェアのビジネスでは、消費者の元に商品を届けることが「主」目的で、その後のメンテナンスは「従」の業務でした。しかし、これからは違います。消費者の手元に商品が届くことはあくまで「従」の業務で、それから先に付加価値をつけることのほうが「主」、メインの仕事になりつつあるのです。何故なら、消費者にはそのほうが便利で、満足度も高まるからです。
    つまり、購入はあくまでもきっかけに過ぎず、その上で、ソフトウェアの更新でお金を稼ぐビジネスモデルが成り立つのです。
    ハードウェアの上にソフトウェアがあって、ソフトウェアの上にサービスがあって、それで初めて顧客に通じる。この3つの因数分解です。この3つがつながって、初めて顧客満足があって、それが再投資されるというものだと思います。
    日本企業はものづくりについては強いですが、世界で使われるソフトウェアはいまのところほとんどない。利用者が使い続けることが収益につながる仕組みづくりには極めて弱いのです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です