今日の日経新聞ピックアップ(2022/8/19)
- スタートアップ長期支援 成長力底上げ狙う
政府調達、大企業と組む事業も/株式購入権は税優遇の延長検討
・政府はスタートアップ企業への支援策を拡充する。
大企業と組んで実施する事業を、技術やサービスの公共調達の対象に加える。
社員らに付与するストックオプション(株式購入権)の税優遇拡大も検討する。
人工知能(AI)などディープテックと呼ぶ新産業を長期的に育成し、成長力の底上げをめざす。
・研究段階から契約に至るまでをカバーする政府調達で、入札への参加や随意契約を特例的に認める制度の対象を拡大する。
2023年度にも、大企業などと組んで大規模な実証事業を手がけるスタートアップにまで広げる。現在はスタートアップだけの事業に限定している。内閣府が23年度に関連する指針をかえる。
・この調達制度は1999年に中小企業庁で始めた。有望な技術の活用をめぐり、政府が最初の顧客となることで民間の投資を呼び込む狙いがある。
・例えば、多くのドローンを使った配達といった大規模な実証事業を必要とする研究開発はスタートアップだけでは難しい。インフラ整備や宇宙ビジネス、農業なども実用化のハードルは高く、大企業と連携して進める事例が多い。
・売り上げをすぐには望めない研究開発型の企業の場合、株価が上がる前に株式を購入せざるを得ず、税優遇の恩恵を受けられないといった指摘がある。優遇する期間を現行の10年から延ばす方向で、政府が与党と調整を進める。23年度の税制改正での議論も検討する。
・民間と協調した助成事業も期間を延長する方針だ。AIや量子コンピューターなどディープテックの分野は、事業化までに長期間を要することが多い。研究開発の初期段階ではリスクが高いとみなされ、民間からの資金獲得は難航しがちとなる。
・ベンチャーキャピタル(VC)と協調したディープテックへの投資を強化する。経済産業省は創業初期のスタートアップを長期で助成する仕組みを設ける。期間は10年程度を軸に調整する。
・既存の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)を通じた支援は、経産省が認定したVCが出資することを条件に、最大で研究開発費用の3分の2を補助している。最長でも1年半分しか支援できず、長期的な支援を求める声が上がっていた。
・政府は今夏に、国内に約1万社あるスタートアップを5年で10倍に増やす目標をかかげた。日本総合研究所の岩崎薫里・上席主任研究員は「日本は研究開発で国際的な競争力を持っていながら、事業化まで結びついていないという問題があった。長期的な視点に立った支援が重要だ」と指摘する。 - IHI、インドでアンモニア火力 NEDOから支援
・IHIは燃やしても二酸化炭素(CO2)が出ないアンモニアをインド西部の石炭火力発電所の燃料に混ぜて温暖化ガス排出量を削減する実証事業に乗り出す。早ければ2026年に混焼を始める計画だ。当面は1カ所での実施だが、現地の他の発電所への展開も視野に入れており、アンモニアの供給網(サプライチェーン)構築につなげる。
・医薬品事業などを手掛ける興和(名古屋市)、インドの発電会社アダニ・パワーと組んで技術面や経済性の課題を検証する。経済産業省が所管する新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が支援を決めた。まずは調査費として2000万円を上限に補助し、実際に混焼する段階に入れば拡充する。
・西部グジャラート州にある既設の石炭火力発電所でアンモニアを20%混ぜる混焼をめざす。アンモニアの比率を高め、将来はアンモニアだけを燃料にする専焼まで拡大する考え。インドの他の石炭火力でアンモニア混焼を展開することも視野に入れる。
・日本国内では東京電力ホールディングスと中部電力が共同出資するJERAと、碧南火力発電所(愛知県)でアンモニアを混焼した実証を23年度内に開始する。
・経産省によると今はセ氏0度、1気圧の標準状態に換算して1立方メートルあたりのコストは20円程度で石炭の約3倍。30年までに10円台後半まで抑えることをめざしている。今の国内需要は肥料用などで108万トン。