今日の日経新聞ピックアップ(2022/8/7)

  1. 自治体IT、ベンダー依存 発注側の責任者不在2割超
    尼崎USB紛失で弊害露呈 人材不足、DXの障害に

    ・自治体の情報システム管理を特定のIT企業に依存する「ベンダーロックイン」が深刻だ。
    ・兵庫県尼崎市で住民情報が入ったUSBが紛失した問題では、特定業者が30年以上同じ業務を受託し、市の許可なく業務を再委託するなどシステム管理の甘さが浮き彫りとなった。
    ・デジタル人材の不足が背景にあり、総務省の調査では市区町村の2割超で責任者が不在だった。

    ・市などによると、同社は住民情報を管理するシステムの基盤を開発し、運用や更新などを30年以上受注し続けていた。市は行政のデジタル化推進を担う「情報化統括責任者(CIO)」も設置していなかった。
    ・システムの業者依存は尼崎市ばかりの問題ではない。公正取引委員会が2021年、省庁や都道府県、市区町村など計1000以上の行政機関の情報システム調達を調査したところ、「既存ベンダーと再契約したことがある」との回答が99%を占めた。国と地方自治体それぞれの割合は開示されていないが、公取委の担当者は「地方に限っても傾向は同じ。限りなく100%に近い」と語る。
    ・再契約の理由は「既存ベンダーしかシステムの機能を詳細に把握することができなかった」が48%で最多。「システムの機能や技術の権利が既存ベンダーに帰属していた」(24%)が続いた。データの引き継ぎを拒むベンダーがいたと明らかにする自治体もあった。
    ・ベンダーロックインが広がる要因の一つはデジタル人材の不足だ。総務省が今年3月に公表した調査によると、全国1741市区町村のうち26%(467団体)がCIOを置いていなかった。任命している場合も81%は首長や副市長らナンバー2の兼務だった。都道府県でも21%が任命せず、知事や副知事の兼務が67%に上った。外部人材を任命していたのは都道府県で3割、市区町村では2%に満たなかった。
    ・公取委の有識者組織のメンバーでもある東京大大学院の大橋弘教授は「役職を兼務することで責任の所在が曖昧になる」と指摘。一方で「発注者側の自治体に知見がなく、ベンダー側がシステム構築やその後の運用を主導せざるをえない側面もある」とも語る

    ・大橋教授は「自治体がシステムを調達する場合は他の自治体と連携し、どのような仕様が必要か、知見の共有が有効だ」と指摘。「業務を外部委託するのは仕方ないにしても、自治体が情報を管理している自覚を持ち、ベンダー主導とならないように専門知識を身につける必要がある」と話す。
  2. ソニー、取引先も脱炭素
    専門部隊が削減計画を検証、調達網全体で取り組み

    ・ソニーは今春から取引先の工場などの脱炭素の取り組みを検証する活動を始めた。製造業におけるQC(品質管理)活動の環境版といえる取り組みで、まずは国内の数社で始めた。
    ・環境活動や工場のエネルギー管理に詳しいソニー社員が複数人でチームを組み、取引先を訪問。改善点を指摘してソニーのノウハウを教える。半年ほどで効果を検証し、脱炭素の国際的な認定機関「SBTイニシアチブ」の認定の取得を目指してもらう。ノウハウが不足する中堅以下の取引先を中心に活動を広げる。
    ・計画策定にとどまらず、取引先の脱炭素化の活動に実地で踏み込むソニーの例は珍しい。

    ・CO2などの温暖化ガスの排出は、自社のオフィスや工場で出る「スコープ1」電力などのエネルギー調達に関連する「スコープ2」調達網全体の「スコープ3」に区分される。ほとんどの温暖化ガスは自社以外の領域で排出される。ソニーも20年度のグループ全体のCO2排出量約1847万トンのうち、スコープ3が9割を占めた
    ・ソニーは16年から取引額の8割を占める主要な一次取引先に対しCO2排出量のほか、脱炭素や生物多様性の確保に向けた取り組みを調査していた。22年にはカーボンニュートラルの達成時期を、自社のオフィスや工場は30年、調達網全体では40年と従来目標からそれぞれ10年早めた。再生可能エネルギーの使用率は、欧州と中国のソニー拠点は既に100%を達成している。日本や北米などの拠点でも30年度までに100%を目指す。

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