離婚時の年金分割について

株式会社HARUグローバルスタイル法人事業の柱のひとつに
“個人と社長のお金の人生設計アドバイス”
を掲げています。
「事業承継」は中小企業支援をさせていただいているなかでも周りで実際に多く直面しており、高齢化した創業者から時代を担う世代への引継ぎが課題となっています。
高齢の事業者にとってみれば、やはり一番の懸案はお金です。
事業に関係する不動産や資産の譲渡・相続、節税対策、個人の年金や社会保険…などなど。
そうした悩みの解消にご協力したいと考えて、自分自身のファイナンシャルプランニング技能士レベルをもう一段上げるべく1級に挑戦しています。
そのなかの重要なひとつが年金です。
今回は離婚時の年金分割について、分かり易い記事になっていました。
日経新聞記事の下図「年金分割の対象期間と分割方法の例」が理解できれば良いと思います。
離婚分割(年金分割)の計算方法は、
- 夫と妻の対象期間標準報酬総額を計算して合算する
- 按分割合で、分割後の夫婦それぞれの対象期間標準報酬総額を計算する
- 夫婦それぞれの老齢厚生年金を計算する
年金分割を行うには、日本年金機構に「合意分割制度」または「3号分割制度」の請求手続きを行う必要があります。
請求期限は、離婚をした日の翌日から起算して2年以内ですが、それが今後は5年以内に延長となる方向です。
離婚で年金分割 婚姻期間の「厚生」が対象
(日経新聞 2025/2/1 朝刊記事)
東京都内に住む30代後半の女性、Aさんは2022年9月に約10年連れ添った夫と離婚した。2人で話し合って財産分与は取り決めたが、Aさんが親権を得た小学生の息子の養育費と面会交流についてはなかなかまとまらなかった。「生活を立て直すのも大変で年金分割はすっかり忘れていた。2年が時効と聞いて昨年7月に慌てて手続きをした。元の夫の厚生年金の一部を分けてもらうことで何とか合意できた」と振り返る。

年金分割は夫婦が離婚した場合に婚姻期間中の厚生年金を分け合い、それぞれ自分の年金とする制度。年金の保険料は夫婦で負担してきたと見なし、老後の生活保障をなるべく公平にする趣旨で07年に始まった。婚姻期間が長いほど分割する年金が増えるので、年長者ほど経済的な利点は大きいとされる。「最近は離婚時の決めごとのひとつとして若い世代にも広がってきた」と行政書士の藤原文氏は話す。
分割するのは、年金額そのものではなく厚生年金保険料の納付記録(標準報酬)だ。2人の納付記録を合計し、どう割り当てるか決める。夫婦では夫の納付記録を妻に分けることが多い。現在、年金事務所に請求する期限は離婚した日の翌日から2年以内だが、5年以内への延長が決まった。民法改正で財産分与が2年以内から5年以内に延びることに伴う見直しだ。実施時期は未定だが、「財産分与と同時に26年4月ごろからの実施を目指すのでは」と弁護士の森元みのり氏は予想する。
制度は2種類ある。「合意分割(離婚分割)」は原則として婚姻期間すべてが対象で、割合を2人で話し合って決める(上限は50%)。もうひとつの「3号分割」は、08年4月以降の婚姻期間のうち配偶者の被扶養者(国民年金の第3号被保険者)になっていた期間が対象。3号だった人の請求で分割でき、割合は2分の1(法定)だ。合意の必要はなく、事実婚でも利用できる。働いていて被扶養者でなかった期間や3号でも08年3月以前の期間があれば、その部分は合意分割で決める。
手順は、(1)年金事務所に「年金分割のための情報通知書」を請求する(2)夫婦で分割割合を話し合う(3)割合が決まったら分割請求の手続きをする(4)「標準報酬改定通知書」を受け取る――だ。(2)がまとまらなければ家庭裁判所の調停や審判で決める。家裁だと大半が50%ずつになる。3号分割では(2)は必要ない。(1)の情報通知書を入手せずに分割請求しても構わない。
厚生労働省によると、23年度の年金分割の件数は3万2642件と10年前の約1.5倍に増えた。3分の1は3号分割のみだ。分割件数は増加傾向だが、年18万件を超える離婚件数の2割に満たない。「制度の認知度はまだ低い。勘違いも多い」と社会保険労務士の永山悦子氏は指摘する。
よくある勘違いは「相手の年金すべてが分割の対象になる」だ。実際は厚生年金部分だけ。基礎年金や企業年金などは対象外。しかも該当するのは結婚から離婚までの婚姻期間のみだ。別居の時期は含むが独身時代は含まない。仮に配偶者がずっと自営業者なら厚生年金がないので分割する年金もない。ちなみに企業年金は財産分与で分ける場合もあるという。
分割を受けた人の平均年金月額の増加額は、合意分割で3万円台、3号分割のみだと7000円台だ。「分割額が『思ったより少ない』という人も多い。過大な期待は禁物」(藤原氏)だ。
夫婦だと妻は常に分割を受ける側と思い込んでいる人もいる。実際には年金納付記録の多い方が少ない方に分けるので、妻の方が多ければ分割する側になる。夫よりも妻の方が収入が多かったり、夫が自営業者で妻が公務員だったりすると、妻は自分の年金を分けなければならないことがある。
分割された年金は原則65歳の受給開始年齢になってから、自分の年金に加え、国から受け取る。
再婚すると分割された年金をもらえなくなると思っている人もいる。「再婚すると受給権を失う遺族年金と混同している。分割された年金は受給前でも受給後でも消滅しない」(永山氏)。分割した相手が死亡しても受け取れる。
年金は受給の資格を得ても申請しなければ受け取れないので、離婚届の提出や当事者間の合意だけでは分割されない。特に家裁の調停や審判で合意するとそれで決着したと思いがち。「決まったのは分割する割合だけ。その後、きちんと年金事務所で手続きをしないと年金額は変更されない」と森元氏は注意する。