東京都の蓄電ファンドに期待

需給調整蓄電でファンド 東京都、官民で50億円規模
電力系統と直結 再エネ発電ムラ解消

(日経新聞 2023/07/07 朝刊記事)

東京都は2023年度、電力系統と直接つないで充放電する「系統用蓄電池」に投資する50億円規模の官民ファンドを立ち上げる。太陽光発電などの再生可能エネルギーは発電量にムラがあることが課題となっており、需給を調整できる系統用蓄電池を課題解消の「キーマン」に指名。ファンドの設立で普及を促進し、再エネ拡大と電力安定の両立を目指す。

<日経新聞 2023/07/07 朝刊記事>

燃料投入量で発電量を調整しやすい火力発電や揚水発電が需給調整役を担ってきたが、二酸化炭素排出量が多いなどの課題がある。系統用蓄電池は電力が余っているときに充電し、逼迫すれば放電するといった機動的な需給調整ができる。二酸化炭素排出量も火力に比べれば少ない。

都はこうした利点を捉え、「再エネ普及には欠かせない存在」(スタートアップ・国際金融都市戦略室)として系統用蓄電池への投資を促す。今回のファンドはいわば「呼び水」としての狙いがある。都では22年度、東京電力管内の電力系統に直接つなげる蓄電システムに25億円を上限に導入費用を助成する事業も始めた。国にも助成金制度がある。

国内では系統用蓄電池の開発が徐々に活発化しつつある。変圧器大手ダイヘンは5月、国内で初めて系統用蓄電システムを国産で構築し一括納入したと発表。大阪ガスも6月、系統用蓄電池事業に本格参入すると発表した。

課題となるのが収益モデルの構築だ。再エネが急速に拡大してきた背景の一つには発電の対価として得られる売電収入とそれを支える固定価格買取制度があった。系統用蓄電池は需給調整市場や卸電力市場などから収入を得なければならず、投資対象としての成長性は高い一方でリスクも大きい。

三井住友トラスト基礎研究所の浅川博人上席主任研究員は「再エネと系統用蓄電池のリスク・リターン特性は全く異なる」としたうえで「両者を組み合わせて投資し、バランスをとることが効果的だ」と指摘する。今回のファンドも再エネ発電所を投融資先の対象に含んでいる。

国内では夏場の節電要請や、余剰電力を管理するための再エネ設備の出力抑制などエネルギー需給が混乱する事態が増えている。6月には関西電力系が再エネ発電事業者の稼働を一時的に停止する「出力制御」を初めて実施した。再エネ拡大と電力安定の両立へ道筋を示せるか。最初の投資案件は24年度になると見込む。

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