再エネで一番重要なのは需給バランス
上手に電力需給バランスを調整できなければ大規模となってしまうため、折角太陽光などによって再エネ発電を推進しても余った再生可能エネルギーを捨てないといけない状況となっています。
例えば九州では、このままでは太陽光による発電出力”制御”は26%になるということです。もったいない。
無駄にしない為に必要なことは、「蓄電池の導入拡大」「地域間で電力を融通する送電線の増強」ですが、まだまだ課題もあります。
再生可能エネルギー狂騒曲2 需給バランス「限界近い」
(日経新聞 2023/07/04 朝刊記事)
「出力制御を実施します」。4月8日、中部電力本店(名古屋市)の中央給電指令所。太陽光・風力発電の出力を一部止める制御が、中部エリアで決行された。電力需要の大きい三大都市圏で初の事態だった。
好天で太陽光発電が伸びる見込みの一方、冷暖房利用の少ない時期に工場が止まる週末が重なった。需給バランスが崩れると大規模停電を招きかねない。「やむを得ない措置だ」。余った再生可能エネルギーを捨てる決断に同社幹部は唇をかむ。
同月16日朝には予定外の出力制御も起きた。誤った電力需給の見通しを手入力したためだった。自動入力なら防げたミスに、中部電力パワーグリッド給電計画グループ課長の田口真海は「システムが後追いになった」と悔やむ。
中部エリアの太陽光の発電能力は3月末時点で1120万キロワット。固定価格買い取り制度の導入から10年で10倍に急拡大した。全国では同12倍に増加。天候で大きく変動する再エネと向き合う現場は綱渡りだ。
出力制御は2018年度、九州電力が離島以外で初めて行った。22年度は北海道や東北、中国、四国、沖縄の電力各社が実施し、23年度は北陸電力、関西電力も続いた。太陽光パネルが高温になりやすい夏場より発電効率が高く、冷暖房需要が減る春や秋に特に起きやすい。
6月4日に初めて踏み切った関西電力送配電は気象状況の変化を受け、前日夕方に急きょ決定。社員は太陽光・風力発電業者への連絡に追われた。残る東京電力管内も「限界が迫っている」(東電幹部)として次の春以降に身構える。
「出力制御を減らすことが大事だ」。経済産業相の西村康稔は強調する。経産省は対策をしなければ中長期的に九州の太陽光の制御は26%に及ぶと試算する。示す対策は大きく3つある。(1)火力発電の出力抑制(2)蓄電池の導入拡大(3)地域間で電力を融通する送電線の増強――だ。
蓄電池は政府が導入を促すものの、価格の高さから「補助金がなくなれば採算は取れない」(中部地方のエネルギー事業者)。政府財源にも限りがあり普及のスピードは上がらない。
送電線は国の認可法人の電力広域的運営推進機関が3月、全国で6兆~7兆円の投資が必要とはじいた。巨額の費用が壁となり、誰がどの程度負担するかは決まっていない。再エネをどこまで有効活用できるのか。なお見通せない。