ブレンデッド・ファイナンス
2030年までの持続可能な開発目標(SDGs)およびESG(環境/社会/ガバナンス)の観点から、サステナブル・ファイナンスへの取組みが国内外で本格化しています。
サステナブル・ファイナンスへの活用が期待されている「ブレンデッド・ファイナンス」とは、民間セクターの資本を呼び込む投資のストラクチャーとして、公的資金や慈善資金と、民間の投資・融資を、組み合わせたファイナンスです。
現在ブレンデッド・ファイナンスは、発展途上国の開発ファイナンスに主に利用されていますが、日本においてもブレンデッド・ファイナンスへの関心が高まりつつあります。
札幌にGX投資最大40兆円調達計画 政府や3メガ銀
(日経新聞 2023/06/17 朝刊記事)
今後10年で150兆円のGX(グリーントランスフォーメーション)投資を呼び込むための枠組みが日本で動き出す。政府と3メガバンクなどが札幌市を国際環境金融都市に位置づけるプロジェクトが月内に始動する。海外で広がる「ブレンデッド・ファイナンス」を活用して国内外で資金を集め、最先端半導体の国内量産に挑むラピダスが進出する北海道で最大40兆円程度の調達を目指す。
金融庁と経済産業省、環境省のほか三菱UFJ銀行など3メガバンク、日本政策投資銀行などが参加する。2024年にも札幌市を環境金融の先進地に育てるための特区に指定、ESG(環境・社会・企業統治)投資を呼び込む。
世界持続的投資連合(GSIA)によると、20年のESG投資額は35.3兆ドルとなり、18年比で15%増えた。日本は環境債や移行債などのESG投資が先進国では低水準だ。
国全体の再生可能エネルギーの潜在量のうち3〜4割は北海道にあるとされる。特に洋上・陸上風力発電への期待は高い。5月には北海道沖の5エリアが、具体的な検討に入る「有望区域」に選ばれた。30年度には本州への200万キロワット級の海底送電線が完成予定だ。再生エネを活用しながら先端半導体の量産を目指すラピダスを軸にデジタル産業を集積させる計画も進む。
資金調達では「ブレンデッド・ファイナンス」と呼ばれる公的資金と民間資金を組み合わせた調達手法などを活用する。民間からの投資を呼び込むため、財団などの公的資金も入れて投資リスクを軽減する。
ブレンデッド・ファイナンスの活用は、政府の経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)にも盛り込まれた。金融庁は北海道などで案件を積み上げながらGX投資の手法として確立したい考えだ。
ブレンデッド・ファイナンスは途上国のESG投資で主に使われてきた。国内では三菱UFJ銀行が、日本貿易保険とブレンデッド・ファイナンスを促進するため連携している。
野村資本市場研究所の小立敬主任研究員によると、世界全体で約1700億ドルの取引が実行されたという。燃やしても二酸化炭素(CO2)を出さない水素の供給網構築など、今後は先進国の脱炭素関連案件でも活用が期待されている。
金融庁や3メガバンク、札幌市などは月内に共同組織「チーム札幌・北海道」を設立する。ファンド・ファイナンスなど6つの部会を設けてプロジェクトを進める。24年にはブレンデッド・ファイナンスに先行してファンドを組成し、国内外からの投資の受け皿とする。再生エネ関連のモデル事業もスタートさせる計画だ。札幌市は今後10年のGX投資の約3割を北海道に呼び込む構想を描く。