新入社員向け決算書の読み方 キャッシュフロー計算書 CF

資金動向見るキャッシュフロー 安川電、最高益でも減少
よくわかる企業財務

(日経新聞 2023/04/21 朝刊記事)

企業の活動にはお金の出入りが欠かせない。そうした資金の動きを用途別にまとめたものが「キャッシュフロー(CF)計算書」だ。モノやサービスの提供、生産設備の取得、金融機関からの資金調達などを確認できる。一定期間のもうけを示す損益計算書(PL)上で利益が出ていても、手元に現金がなければ「黒字倒産」になりかねず、企業の実態をみるのに適している。

CF計算書は3つの項目から構成される。1つ目は「営業CF」だ。商品やサービスの代金を回収し、お金を受けとるとプラスに、原材料の仕入れなどでお金を支払うとマイナスになる。2つ目の「投資CF」は将来の成長のための投資に使うお金の動きを示す。土地や生産設備、M&A(合併・買収)による株式の取得などを含み、マイナス(支出超)になることが多い。

営業CFと投資CFを合わせたものを「フリーキャッシュフロー(FCF)」という。プラス幅が大きいほど株主還元や借入金返済など企業の判断で使えるお金が手元に残ることを意味する。3つ目の「財務CF」は銀行や市場からの資金調達や返済、配当などの支払いを表す。

<日経新聞 2023/04/21 朝刊記事>

営業CFはPLの利益と似ているが、PLでは企業が商品やサービスを顧客に販売した時点で売り上げや利益を計上する一方、営業CFは入金があった時点や材料を買った時点の出金を示す。企業活動では原材料を仕入れてから、製造、納品、入金などいくつものプロセスがある。このためPLとCFでズレが生じることがある。

産業用ロボット大手の安川電機の財務諸表でこのズレを見てみる。2023年2月期(国際会計基準)の連結営業利益は前の期比29%増の683億円だった。電気自動車(EV)向けや人手不足による生産自動化などの需要を取り込み、4期ぶりに最高益を更新した。

一方、営業CFは22億円のマイナスだった。サプライヤーへの現金の支払期間を短縮し、営業債務が減った。営業CFの減少が主因で期末の手元現金は期首から2割超減った。

営業CFの赤字があっても、すぐに問題があるわけではない。安川電機の場合、供給網の混乱に対応するために戦略的に在庫を積み増したことが影響した。在庫は商品を販売する前の段階で、増えるほどその代金の支払いにより営業CFにはマイナスに働く。

現金の流出も、成長途中の企業は投資CFのマイナスが大きく、足りない現金を借入金などで賄うため財務CFがプラスになることが多い。企業の戦略を意識してCF計算書を確認することが重要だ。

ただ、投資が先行しすぎて、投資を賄う資金調達ができなくなったり、販売は好調でも入金が追いつかず、給与や原材料の支払いなどができなくなったりすることがある。特に後者で現金が足りなくなり経営が破綻した場合は「黒字倒産」となる。PLだけで判断するのは難しい。

「利益は意見、キャッシュは事実」といわれるように、CFにも気を配ることで企業の真の状態を確認したい。

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