新入社員向け決算書の読み方 損益計算書 PL

経営成績示す損益計算書 しまむら、人件費高騰でも増益
よくわかる企業財務①

(日経新聞 2023/04/19 朝刊記事)

インフレや為替急変動など経営環境がめまぐるしく変わるなか、企業の経営成績や財務状態はどうなっているのか。まとめたのが決算書だ。投資家に重視され、新入社員であれば押さえておきたい決算書などの読み方を4回にわたって解説する。初回は企業の経営成績を示す損益計算書(PL)を取り上げる。

「新価格帯への移行が顧客に受け入れられた」。しまむらの鈴木誠社長はこう話す。昨年の秋冬物で機能や品質を高めた高価格帯商品を拡充。SNS(交流サイト)で情報発信するなどして販売を伸ばし、人件費や水道光熱費の増加の影響を補った。

<日経新聞 2023/04/19 朝刊記事>

企業のもうけ(利益)は、収益から費用を差し引いて求める。損益計算書では企業がどのように稼いだのか把握しやすくするため、収益や費用を性質によって区分する。様々な収益や費用を損益計算書の上から下にかけて加えたり引いたりして、最終的なもうけを導く。

一番上の項目が売上高だ。企業が商品やサービスの対価として得たお金の総額を示す。しまむらは2023年2月期の連結売上高が前の期比6%増の6161億円と2年連続で最高だった。キャラクター商品を積極的に開発するなどして客単価を上昇させつつ、客数も伸ばした。しまむら事業の既存店売上高は5.3%増えた。

次に費用を見てみる。本業に関連する費用が「売上原価」と「販売費及び一般管理費(販管費)」だ。売上原価は売れた商品の仕入れや製造にかかった費用を、販管費は商品を売るためにかかる費用と会社全般の業務の管理活動にかかる費用の合計額をさす。

しまむらの場合、売上原価に商品の仕入れ高などを、販管費に人件費や広告宣伝費、不動産賃借料などを計上する。23年2月期の売上原価は円安で輸入商品の仕入れ高が増えた。販管費は賃上げで人件費が5.8%増えたほか、電気料金の上昇により店舗などで使う水道光熱費が29.1%増えた。

売上高から売上原価と販管費を引いて求めるのが営業利益だ。本業のもうけを示す。しまむらの前期の営業利益は8%増の533億円だった。売上原価、販管費ともに増えたものの、それ以上に売上高が伸びて営業利益の増加につながった。売上高と営業利益がともに増える「増収増益」の状態で、商品開発や販売促進といったビジネスが好循環になっていると分かる。

ほかにもいくつかの段階の利益がある。投資家が最も重視するのが、最終的なもうけを示す純利益だ。本業以外の臨時的な損益を足し引きしたり、法人税などを引いたりして求める。しまむらの23年2月期の純利益は7%増の380億円と2年連続で過去最高だった。

損益計算書の項目を使った指標も役立つ。その一つが売上高純利益率だ。採算性を示し、純利益を売上高で割って求める。川崎汽船は23年3月期の売上高純利益率を69%と見込む。プライム上場企業の平均が6%のなか、異例の高水準だ。海運大手3社が共同出資するコンテナ船事業会社からの利益が高水準となっている。こうした指標を使って過去の実績や他社と比較すれば、企業の収益力を評価できる。

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