今日の日経新聞ピックアップ(2023/1/28)

  1. トヨタ「成長株」転換めざす
    ネット・EV時代に即応 脱「車屋」へ変革急務

    ・トヨタ自動車のトップを約14年務めた創業者の孫、豊田章男社長。してきたことは1つだったはずだ。同社を一段と永続的な組織体にするのと同時に、インターネットの時代に合った「グロース(成長)企業」に転換する。そのミッションは豊田会長、佐藤恒治社長の新体制になっても変わることはないだろう。むしろ変化を先取りし、成長できなければ、トヨタの永続性も危うくなる。
    ・豊田氏の社長としての歴史はリーマン・ショック後の赤字転落で始まり、その後も米国での品質問題、東日本大震災などが続いた。唐突に見える組織改革、幹部人事で、内部に戸惑いや反発が起きたこともあった。
    ・だが、結果を見ればトヨタの世界販売台数は1.4倍に、株式時価総額は2倍以上になった。
    ・創業家出身だけに会社の永続性にはひときわこだわった。だが、その一方でやろうとしたのが「古いトヨタを壊すこと」だったはずだ。
    豊田家には「一代一業種」という、車の他に新事業をおこす古い慣習がある。父の時代はそれが住宅だったが、豊田氏が選んだのはサイバー空間と行き来するような世界で新しい稼ぎ方を模索することだった。
    ・株式市場には「バリュー株」「グロース(成長)株」という分類がある。1937年創業のトヨタは高い成長率より既存事業の収益性が問われるバリュー株銘柄の典型だ。では、それをどう変えるか。
    豊田氏は2021年にトヨタからソフトウエア部門を切り出し、「ウーブン・プラネット」としてくくり直した。東京・日本橋にある同社内では立ち乗り電動車で社員が行き交うようなシリコンバレー的な社風をつくり、変化の象徴にした。
    ・ウーブン社は自動車用基本ソフト(OS)をつくり、外販もする。将来は従来のトヨタとは別にウーブン社が「第2トヨタ」として株式上場し、「第2トヨタが第1トヨタより時価総額が大きくなるような将来を想像したい」と語った。
    ・私財を投じ、創業家出身者にしか許されないような超長期の構えで臨むのだろう。ちなみに、ウーブン社には子息の大輔氏が幹部でいる。
    ・とはいえ、変化の速度は速い。13年前に出た、米経営学者、ジェームズ・コリンズ氏による「ビジョナリー・カンパニー 衰退の五段階」という本があり、豊田氏は社長になったばかりの09年に講演で引用している。
    卓越性が注目された企業でも衰退したり、消滅してしまったりする。その過程には5つの段階があり、
        (1)成功から生まれる傲慢
        (2)規律なき拡大路線
        (3)リスクと問題の否認
        (4)一発逆転策の追求
        (5)競合への屈服と凡庸な企業への転落か消滅
    ――だという。

    ・リーマン・ショックで深手を負ったトヨタは当時、「規律なき拡大路線」の段階にあったと豊田氏は自省した。だが、時は流れ、今は電気自動車とインターネットの時代だ。警戒レベルは(3)の問題の否認、つまり米テスラのような新興勢力の実力を軽視すれば、足をすくわれかねない局面である。
    ・産業連関的にみて同社の先に広がる企業の裾野は広い。「車屋」中心の組織を抜本的に変えるのは難事業になるが、トヨタが変革の速度を速め、時価総額で2倍も差があるテスラなどのグロース企業にどう肉薄するかが今後も焦点だ。日本の自動車産業、さらには産業界の浮沈もかかった重要局面であることに変わりはない。

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