今日の日経新聞ピックアップ(2023/1/21)

  1. データで読む地域再生ご当地産品、知財で育む
    「地域団体商標」741件に 神戸牛、皮革もブランド化

    ・地場産品を知的財産として守り、育てる動きが広がってきた。地名と商品・サービス名から成る地域ブランドを「地域団体商標」として登録しやすくする制度が2006年に始まり、全国の有効登録数は22年末現在で741件になった。模倣品の排除やライセンス契約による販路拡大が見込めるが、効力は国内にとどまる。中国で日本の地名などを第三者が登録する例が相次ぐ中、海外対応を見据えた戦略づくりが欠かせない。
    通常、地名と商品・サービス名を合わせた文字商標は「夕張メロン」や「西陣織」のように全国的な知名度がないと登録できない地域団体商標では近隣の都道府県で周知性があれば登録できる。名称を独占的に使えるなど効力は通常の商標と同じで、早い段階からブランドの保護や管理に注力できる。
    ・特許庁によると、都道府県別の登録数は京都府の68件が最多。工芸品や野菜など「京」を冠した産品が目立つ。2位以下は兵庫県(44件)、北海道(36件)と続く。8位の東京都(23件)も「江戸切子」など「江戸」がらみの登録が多い。
    ・兵庫県では21年、「KOBE LEATHER(神戸レザー)」が革素材として全国で初登録された。「神戸ビーフ」として海外でも知名度がある神戸牛の活用を広げようと、神戸市の革小物店や家具店が19年に設立した「神戸レザー協同組合」が取得した。年約400頭分の皮革で小物入れや財布を作る。
    ・組合は評価機関が神戸ビーフと認めた但馬牛の原皮のみを使うが、神戸牛の原皮は他の牛と混在して流通するケースがあり神戸牛の皮革をうたった商品も出回る。片山喜市郎代表理事は「登録後は一部百貨店にあった模倣品がなくなった」と話す。
    模倣品対策が「守り」なら、販路拡大は「攻め」の活用になる。北海道の「十勝川西長いも」は帯広市川西農業協同組合などが1999年に輸出を始め、06年に商標登録した。産地証明が必要になった東日本大震災以降は、登録証が国が認めた産地証明として扱われ、輸出事務が円滑に進んだ。衛生管理に関する国際認証の取得などの取り組みも実り、ピーク時の15年の輸出は11億円強に達した。
    ・22年末と06年度の登録数を比べた増加率(登録数が全国平均を上回る16都道府県が対象)は、千葉県が18倍でトップ。ご当地グルメの祭典「B-1グランプリ」の常連「勝浦タンタンメン」(勝浦市)は成功例の一つ。地元の企業組合が14年に登録し、食品メーカーなど10社以上とライセンス契約を結ぶ。コラボ商品の売り上げから得る使用料は年間数百万円に上る。
    ・欧州では古くから地名の価値が重視されてきた。フランスのナポレオン3世はパリ万博(1855年)に出品したボルドーワインの格付けを命じ、ボルドーを生産地として広めた。農水産品の名称を保護する「地理的表示(GI)」制度も欧州連合(EU)が先行して導入した。
    ・一方、日本から海外進出する際の有力な選択肢となる中国では、日本の地域ブランド名が正当な権利を持たない第三者によって商標登録される例が後を絶たない。対抗には、何より海外で先に登録することが大切だ。
    特許庁も海外での出願にかかる費用の半額を補助するなどして後押しする。東京理科大大学院の生越由美教授(知的財産戦略)は地域団体商標の取得について「登録された名称で信用あるものを生み出していくという決意表明にほかならない」と指摘。その上で「関係者が『地域の財産』としての認識を共有し、権利の保護と活用にビジネス感覚が必要だ」と話す。

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