今日の日経新聞ピックアップ(2023/1/20)
- 環境・人権対策に企業保険 ESG経営、備え広がる
東京海上は再発防止補償 グローバル企業に照準
・環境や人権問題を巡り、経営陣の責任が生じた場合の費用を補償する損害保険が広がり始めた。東京海上日動火災保険は1月中にグリーンウオッシング(みせかけの環境対応)や性差別の問題が起きた際に調査や再発防止の費用を払う保険を売り出す。海外でも米保険仲介のマーシュが企業向けにESG(環境・社会・企業統治)スコアを算出し提供する。ESG経営を進める企業に対し、万が一の不祥事リスクへの備えを促す構図だ。
・東京海上は1月中に役員の不祥事に備える役員賠償責任保険で新たな特約を設ける。グリーンウオッシングや性差別の問題で役員が株主などから責任を追及された際に、調査や再発防止の費用を払う。ESG経営に取り組む企業に対し、意図しない不祥事リスクへの対応を促す。
・監査法人トーマツと共同開発したESGの評価モデルを使い、保険引き受け時に企業の環境や人権に関するリスクを診断する。取締役や社員の女性比率や離職率、温暖化ガス排出実績、資材や部品の調達国などを分析する。環境問題や人権侵害に関する対策が十分な企業は保険料を2割程度下げる。対策が不十分な企業の引き受けは見合わせる場合がある。
・既存の支払限度額は社内調査費が1000万円、第三者委員会の設置に必要な費用が5000万円となっているが、今回の特約で計5000万円上乗せする。新たに再発防止策を作る費用も500万円まで補償する。調査で経営陣の過失ではなく故意と判明すれば保険金を払わない。保険料は上場企業の場合、平均で年100万円程度となる。今後3年間で約1億5000万円の増収効果を見込む。
・背景にあるのは、環境や人権を巡る企業への視線は世界で厳しくなっていることだ。米コロンビア大学法科大学院のサビン気候変動法センターによると、気候変動関連の訴訟は米国だけでも年間100件超ある。
・米マクドナルドは欧州で紙製ストローをリサイクルする方針を示したものの実現せずに批判を浴びた。オーストラリアのコモンウェルス銀行は気候変動のリスク開示が不適切だとして株主から提訴された。米アマゾン・ドット・コムは人工知能(AI)による人事採用システムが女性を不利に評価していた。
・損保業界でESGに着目した保険商品の開発が広がる。国内では損害保険ジャパンが原料調達から販売まで至る供給網で発覚した強制労働や児童労働などの人権侵害を解決するための費用を払う保険を販売している。三井住友海上火災保険やあいおいニッセイ同和損害保険もESG対策を手がける企業に対して保険料の割引を検討している。
・不祥事に直面した企業は思わぬ費用が必要になるため、海外では先行して保険の整備が進んでいる。マーシュは22年6月からESGスコアを算出し、米AIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)や米バークシャー・ハザウェイ傘下の保険会社など複数の損保と連携して環境に関する不祥事リスクの補償を始めている。
・供給網の人権侵害を巡っては、強制労働を理由に中国の新疆ウイグル自治区からの輸入を原則禁じる法律が米国で施行されるなど、対策が広がりつつある。日本企業においてもグローバル展開を進めるなかで、本国の経営陣にとって各地で思わぬトラブルに遭遇するリスクが高まっており、関連する保険商品の開発を本格化させている。 - ユーグレナ、4社から78億円調達 バイオ燃料製造に充当
・ユーグレナは19日、新株と新株予約権付社債(転換社債=CB)の発行でマツダなど4社から計約78億円を調達すると発表した。ユーグレナなどがマレーシアで建設を予定するバイオ燃料の製造プラントの関連資金に主に充当する。資本業務提携を結ぶ丸井グループとはユーグレナの健康食品などの販売で連携する。
・CBは48億円分を発行し、マツダが28億円、第一生命保険が20億円を引き受ける。マツダは自動車レースでバイオ燃料を使用するなどユーグレナと連携しており、建設を予定する商業プラントで製造する燃料の調達も視野に入れる。CBの利率は年率0.04%で発行日は2月6日。償還期限は2028年を予定する。
・新株は丸井グループが約20億円、ロート製薬が約10億円を引き受け、両社ともユーグレナと資本業務提携をそれぞれ結ぶ。丸井グループはユーグレナの健康食品や化粧品などのヘルスケア商品の販売などを検討する。ロート製薬はヘルスケア商品の共同開発や藻類を活用した化粧品原料などの共同研究に着手する。
・ユーグレナはマレーシア国営石油ペトロナスとイタリア石油大手のエニとバイオ燃料の製造プラントをつくる検討を始めており、23年中に最終合意する。今回の総調達資金のうち約69億円を充当する。CBを全て株式に転換したと仮定した場合、マツダの出資比率は2.46%で第4位の大株主となる。