今日の日経新聞ピックアップ(2023/1/17)
- ESG投資、基準制定続々
三井住友トラストは特性・開示など評価
アセマネOne、ファンドを4つに分類
・運用各社がESG(環境・社会・企業統治)投資の基準設定に動いている。三井住友トラスト・アセットマネジメントは投資手法や組み入れ銘柄をESGの観点から評価し、基準を満たす商品を「ESGプロダクト」に認定する。アセットマネジメントOneは投信の新たな分類基準を設けESGなどの名称に関するルールを設定した。
・ESG投資の基準を定め、個人や年金基金などの投資家が適切に判断できるようにする。
・環境などに配慮していないと消費者から判断された企業は製品のボイコットにあったり、サプライチェーンから排除されたりするといった動きがある。ESGで高く評価できる企業は中長期的な事業リスクも低い傾向がある。金融庁によると、ESGをうたう投信の2021年の新規設定本数は96本で20年の41本から2倍以上に増えた。
・三井住友トラストは22年12月に基準を公表した。適切なESG投資手法を運用に取り入れているか、組み入れ銘柄にESGの特性があるか、適切な情報開示ができているかの3点で商品を評価する。すべての基準を満たすものを「ESGプロダクト」と認定し、ESGを踏まえた投資判断をしやすくする。
・具体的には組み入れ銘柄とファンドが参照するベンチマークの温暖化ガス排出量や独自に定めるESGスコアを測定・比較し、基準にどれだけ追従できているかなどを測定する。設定した要件を満たしているかを定期的に検証・開示し、基準の見直しも行う。
・アセマネOneは10月末にサステナブル投資の商品体系を新たに設けた。社会・環境問題の解決を投資目的とする「インパクト投資」や、ESGに積極的な企業に投資する「ESGリーダー」など4つのカテゴリーにファンドを分類する。各商品がどの程度ESGを考慮しているのかを投資家が判断できるようにする。ネーミングルールも整備し、例えばESGという名称は基準を満たす商品に限定する。
・野村アセットマネジメントやニッセイアセットマネジメントもESGファンドの投資基準を設定・公開している。
・相次ぐルール制定の背景にはESG投資への「ウオッシュ(見せかけだけ)」との批判がある。金融庁は運用会社が運用プロセスの実態に即した説明や開示を積極的に行うべきだと指摘し、ESG投信に関する監督指針案も公表した。ESG投信の定義を定め、脱炭素やSDGsなどの名称に関する基準も設定した。
・海外ではESGウオッシュを厳しく取り締まる動きが出ている。欧州ではドイツ銀行傘下の運用会社DWSのESG投資がウオッシュではないかという疑惑が浮上し、当局の家宅捜索を受けDWSのトップが辞任した。米国でも金融大手のバンク・オブ・ニューヨーク・メロン傘下の資産運用会社が当局に制裁金を科される事案が発生している。 - ANAとJAL、再生燃料を伊藤忠から調達
米新興が生産
・全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)は環境負荷の少ない航空燃料「SAF」の調達で、米SAF製造のレイヴェン(ワイオミング州)、伊藤忠商事と合意した。レイヴェンが2025年にも商用生産するSAFをそれぞれで調達し、国際線で搭載する。航空業界は50年に二酸化炭素(CO2)排出実質ゼロを目指す。商用生産の計画で先行する欧米企業から調達を進める動きが本格化しつつある。
・ANAとJALそれぞれが調達に向けた覚書を結んだ。今後、供給量や価格などの詳細を詰め、商用生産に向け具体的な調達契約を結ぶ。伊藤忠が調達し、各社にSAFを供給する。
・レイヴェンは伊藤忠が21年に出資。米国で植物系廃棄物や都市ごみなどの発酵で発生するメタンガスから再生燃料を製造する技術を持つ。25年に米カリフォルニア州でSAF生産を目指し34年までに欧米で年間20万トン規模の生産を見込む。
・ANAとJALはともに廃食油などを原料にSAFを商用生産するフィンランドのネステからも伊藤忠を通じて調達実績があるが、世界的にSAFの調達が急務となる中で商用生産計画で先行する欧米企業からの調達を増やしている。
・ANAは30年度に燃料の10%以上、50年度に全量をSAFに置き換える目標を掲げる。ネステのほか、米国でエタノールを原料としたSAFの生産を23年にも始めるランザジェット(イリノイ州)とも契約している。
・JALは25年度に燃料の1%、30年度に10%をSAFに置き換える計画。SAF生産の米フルクラム・バイオエナジー(カリフォルニア州)に丸紅などと出資するほか、航空連合「ワンワールド」の加盟各社と共同で米ジーボ社(コロラド州)などとも契約した。
・SAFは原料を航空機のジェット燃料と混ぜて燃やす。ライフサイクル全体でCO2排出量を8~9割減らせるため、脱炭素の有効な手段だが、その供給量は世界で消費する航空燃料全体の0.03%しかなく、航空各社の争奪戦が進んでいる。
・国際航空では22年10月、航空機が排出するCO2を50年までに実質ゼロとする目標が採択された。24年以降は19年比較で排出量を15%削減することが求められ、削減できない場合はオフセットする必要がある。日本政府は30年に航空燃料の1割(約130万キロリットル)をSAFにする目標を掲げるが、商用生産は欧米企業が先行する。
・燃料の自給は経済安全保障にも関わるため、日本では官民連携で国産SAFの商用化に向けた動きも加速している。22年には日揮ホールディングスなどが中心となり、国産SAFの製造会社を設立。24年の製造を目指している。三菱商事やENEOSホールディングスも27年に年数十万キロリットルの供給網を国内に完成させる考えだ。