今日の日経新聞ピックアップ(2023/1/12)
- 都内倒産 3年ぶり増 支援規模縮小が影響
昨年2.2%増1151件、民間調べ
・東京商工リサーチは11日、2022年の東京都内の倒産件数(負債額1千万円以上)が前年比2.2%増の1151件だったと発表した。新型コロナウイルス禍に伴う資金繰り支援で倒産件数は抑制されてきたが、3年ぶりに増加に転じた。同社は「雇用調整助成金など支援策の規模縮小が影響した」と指摘する。
・新型コロナ関連倒産は前年比3割増の450件で、全体の39%を占めた。
・業種別では飲食業を含む「サービス他」が410件で最も多く、「卸売」208件、「建設」125件、「情報通信」122件と続いた。月別にみると、22年6月以降は、8月を除いて前年同月を上回って推移。夏以降に増加傾向が鮮明になった。
・負債額1億円未満の倒産が75%を占め、コロナ禍の影響を強く受けた小規模事業者の倒産が目立った。負債総額は3215億円で前年比20.6%減だった。
・不安定化する国際情勢を背景にした原材料高の影響などで、厳しい事業環境に置かれている企業は多い。同社は「資源高や人手不足、賃金上昇などに起因する倒産を中心に、緩やかに増える可能性が高い」との見通しを示している。 - 都、太陽光設置費を補助
来年度から、住宅メーカーに
・東京都は2023年度から新築住宅に太陽光パネルや蓄電池を設置する住宅メーカーに対して設置費用を補助する事業を始める。都は25年度から新築住宅への太陽光パネル設置を義務化するが、制度開始に先立って事業者を直接的に支援することで再生可能エネルギーの普及に弾みをつける。
・11日に開いた23年度予算案の知事査定後に小池百合子知事が明らかにした。
・太陽光パネルなどの設置費用は住宅の販売価格に転嫁される。都は1キロワット当たり12万円を補助する方針。住宅メーカーが販売価格の割引原資とすることを期待する。
・新たな制度では再エネの普及に重点を置き、蓄電池の導入や省エネ改修を伴わないパネル単体での設置も補助対象とする。既存住宅に対してパネル単体を設置する場合の補助制度も23年度から始める方針だ。 - 始まる「金利高・株高」時代
日本株、デフレ脱却期待
・突然の実質利上げに動いた「日銀ショック」から年末年始を挟んで3週間。当初はネガティブに反応した日本株の投資家の間に、その影響を冷静に考え直す動きが広がっている。金利上昇が日本経済の本格的なデフレ脱却を示すものであれば、株価にもプラスに働くはず。物色動向に目をこらすと、そんな「金利高・株高」の世界を先取りする動きも出始めている。
・「直感に反するね」。ここ数日、JPモルガン証券の西原里江氏はある表を海外投資家に示している。すると、大半の投資家からは、驚きの言葉が返ってくるという。
・2000年以降の日本の10年債利回りとTOPIXの12カ月先予想PER(株価収益率)について、金利水準ごとにPERの中央値を並べたこの表をみると、興味深い事実が浮かび上がる。「金利が上がればPERは下がる」という教科書が教える事実に反し、両者に逆相関の関係が全く働いてこなかったのだ。
・「日本株はデフレという構造問題でディスカウントされ、金利とPERの通常の関係が働かなかった」。西原氏は指摘。「逆に今後予想される金利上昇がデフレ脱却に裏打ちされているものであれば、バリュエーションは再評価されるはずだ」
・では、なぜ長期金利の変動許容幅を広げた日銀の修正を受け、株は売られたのか。昨年12月20日の政策決定会合後、日経平均株価は年初にかけて1500円超下げた。
・一般に2つの理由が説明されている。まずは、日米金利差の縮小で円高・ドル安が進み、輸出企業の採算悪化につながると警戒されたことだ。さらに、企業価値を算出するための「割引率」が金利上昇で跳ね上がり、はるか先の利益成長を織り込んだ成長株を中心に売られたという理屈だ。
・だが、この理屈で説明がつかない「ちぐはぐさ」があることに気づく。値下がりが大きかったのは、電力や陸運といった業種で、自動車や電機など外需企業が大きく売られたわけではない。
・注目すべき動きがある。銀行など金利上昇が業績を押し上げる金融セクターに交じり、小売業が日銀政策修正後に買われた上位に顔を出しているのだ。日本株がデフレ脱却を期待し始めたひとつのサインといえる。
・わかりやすい例が、11日に最大で年収4割アップという、国内従業員の賃上げが報じられたファーストリテイリングだ。この日の株価は一時1.8%高まで上昇した。
・見逃せないのが、ファストリが昨秋、デフレの象徴だった「1990円フリース」を2990円に上げるなど、大幅な値上げに踏み切っていることだ。「値上げと賃上げの好循環」でデフレ脱却の先陣を切ろうとするファストリを、株式市場はもろ手を挙げて歓迎した。
・「値上げに対する企業の考え方が変わってきた」。野村証券で食品業界を担当する藤原悟史氏はいう。「単なる原材料高の転嫁ではなく、サプライチェーン強化など競争力向上につなげる『攻めの値上げ』に踏み切る企業が出てきた」
・金利上昇が株安に直結するのは、米欧のような「普通の国」の株式市場が経験することだ。金利高・株高のシナリオを普通の国ではないこの株にお金を投じる投資家は念頭においたほうがいい。