今日の日経新聞ピックアップ(2023/1/4)
- IPO調達額、65%減
昨年の世界、景気後退懸念 米で中止増加
・世界で新興企業へのマネー供給が目詰まりしている。2022年の新規株式公開(IPO)の調達額が1400億ドル(約18兆円)と前年より65%も減った。米国ではIPOの中止件数が、ITバブルが崩壊した00年以来の高水準になった。欧米の金融引き締めで投資家が景気後退を懸念し、リスクマネーが細っている
・金融情報会社のリフィニティブによると、22年のIPOの調達額(12月19日時点の速報値)は前年比65%減の1446億ドルにとどまった。英国の欧州連合(EU)離脱が決定し、経済不安が高まった16年(1328億ドル)以来の低水準だ。
・リスクマネーが細っているのは、欧米中銀の金融引き締めで景気後退懸念が高まっているためだ。特に米国の影響が大きい。調達額は前年比95%減の80億ドルと、この20年間で最低となる見通し。
・米国ではIPOの中止が相次いでおり、人事管理システム開発のジャストワークスが22年中の上場を見送った。米金融情報会社のディールロジックによると、中止件数は12月16日時点で173社と、00年(265社)以来の水準だ。日本でもローソンが傘下のスーパー、成城石井(横浜市)の上場申請を取り下げた。 - IPO時の企業価値評価額、資金調達時を下回る
・日本の新規株式公開(IPO)で、企業価値の評価額が前回の資金調達時を下回る「ダウンラウンド」が相次いでいる。景気後退を懸念し評価額が下がっても、IPOを優先させた格好だ。成長性が高い企業には資金が集まっており、選別する動きが強まりそうだ。
・2022年12月27日に上場したオンラインの本人確認サービスを手掛けるELEMENTS(エレメンツ)は、18年9月の資金調達時の評価額が約300億円なのに対し、IPO時の想定時価総額は約30億円と9割の減少率だった。
・22年12月15日に上場したスマートドライブも同様に減少率は5割強となった。北川烈社長はダウンラウンドでもIPOを急いだ理由として、「23年はさらに相場が悪化する可能性もある」ことを挙げた。
・日本は欧米と比べ、出口がIPOに偏っている。
・ある大手証券会社のIPO担当役員は「多くの会社が(資金を回収したい)ベンチャーキャピタル(VC)などのプレッシャーにより、早期のIPOを選択する」と打ち明ける。
・VCのWiLの伊佐山元最高経営責任者(CEO)は「IPO投資が回復するまでに2年はかかる」と指摘する。
・新興企業は資金調達環境の悪化を見据え、手元資金を厚めに確保するなどの防衛策を迫られそうだ。