消えゆく「街の老舗」と、現れる「デジタルノマド」 ~第5回

変わらない「99.7%」の中で起きている地殻変動
「中小企業の数は減っている」と言われながらも、全体の比率としての99.7%という数字は驚くほど安定しています。しかし、その内実を詳しく観察すると、そこには劇的な「主役の交代」が起きていることが分かります。かつて街の顔だった「老舗」たちが去り、代わりに新しいタイプの「個人」が続々と現れているのです。
伝統的な自営業の衰退と、新しいプロフェッショナルの台頭
長年、地域の胃袋を支えてきた食堂や、熟練の技を持つ街の靴職人。こうした「伝統的な自営業」は、後継者不足や消費行動の変化によって、惜しまれつつもその数を減らしています。一方で、統計上の「個人事業主」の枠を埋めるように増えているのが、ITやクリエイティブを武器にするフリーランス、いわゆる「デジタルノマド」※たちです。
※「デジタルノマド(Digital Nomad)」:IT技術を活用してインターネット経由で仕事をし、特定の居住地に縛られず、世界中を旅しながら働くライフスタイルを送る人々
彼らは実店舗を持たず、PC一台で世界中と取引をします。組織に属さないという点ではかつての自営業と同じですが、その性質は大きく異なります。地域社会に深く根を張る「守りの個人」から、プロジェクトごとに繋がりを変える「攻めの個人」へ。この変化は、日本の労働市場がより柔軟で、個人のスキルが直接評価される時代へと移行していることを示唆しています。
新旧の交代は寂しさも伴いますが、大切なのは、伝統的な事業者が持つ「信頼と技術」を、新しい世代の「スピードと発信力」でどうアップデートするかです。この二者が融合したとき、日本の「個人」の力は、かつてないほど強固なものになるはずです。
時代を繋ぐ「診断士」の役割
廃業を選ぶ店主の想いと、起業を志す若者の熱量。その両方に寄り添うのが、診断士である私の役目だと思っています。形は変わっても、自分の腕一本で未来を切り開いていくという「自営業の魂」は、今も確実に引き継がれています。変化を恐れず、新しい時代の「個人」の形を共に模索していきたいと思います。
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