ソニー 放送/映画製作用カメラ

まさに前職で30年間関わってきた放送製作用カメラ/映画製作用カメラについての内容で、ジョージ・ルーカス監督との「スターウォーズ・エピソード2」がシネアルタのスタートというのは有名な話。

放送用機器業界において主力の業務用ビデオカメラでは、現在もソニーが世界シェアで6割以上を持ち、パナソニック他が続きます。

ソニーのカメラ、ハリウッド開拓
3年で採用5倍、監督と二人三脚

(日経新聞 2023/08/04 朝刊記事)

<日経新聞 2023/08/04 朝刊記事>

ソニーグループが映画撮影用カメラ「VENICE(ベニス)」で、映画産業での存在感を高めている。米ハリウッドの監督らのニーズを徹底して反映し、2022年に採用された米国発の主な映画作品数は3年前の5倍になった。ソニーGは傘下に老舗の映画製作会社を持つが、「新参」の映画カメラでも世界市場を開拓する。

最先端の映画機材の展示会「シネギア」。今年は4年ぶりにハリウッドで6月に開かれたが、その開幕前夜、白いビルに約300人の映画関係者が集まった。スクリーンや編集機材が並ぶ部屋に入ると、約20人の監督が車座に。輪の中心にいたのは映像機器などを手がける事業会社ソニーの槙公雄社長と技術者で、第一線の監督のカメラへの意見が飛び交っていた。

「ソニーは常に『ベニス』へのフィードバックに耳を傾ける撮影のパートナーだ」。参加者で、世界的人気ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のロバート・マクラクラン撮影監督はこう語る。

場所はソニーの最新機材やスタジオセットを備える「デジタル・メディア・プロダクション・センター(DMPC)」。北米のクリエーターが製品を試し、要望を吸い上げる拠点となる。

ベニスは、ソニーが18年に発売した映画に特化したカメラだ。ベニスで撮影され、22年に公開された米国発の主な映画は31本。19年の5倍超に上る。国際映画祭のノミネート作品が多く、邦画でも23年にカンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した「怪物」などで使われた。

映画カメラは、老舗で世界首位の独ARRI(アリ)社が強い。ソニーの世界シェアは長らく1割弱だったが、足元で大作映画などへの採用が急速に増えている。特に人気を呼ぶのがカメラ本体から小型のヘッド部分を外せる「エクステンションシステム」だ。狭い場所でも撮影でき、業界でいち早く実用化した。本体とケーブルでつなぎ、高画質も劣化しない。

22年公開の話題作「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」。3次元データを得るため、カメラ2台を担ぐ撮影が欠かせなかった。ベニスの2キログラム前後のヘッドを切り離し、70歳近いジェームズ・キャメロン監督も軽々と2台を担げたという。「トップガン マーヴェリック」では、戦闘機の狭いコックピットに計6台を搭載。迫力の飛行シーンを実現した。

実は開発のきっかけはキャメロン監督らの「カメラ本体からヘッド部分を離せたら面白い作品が撮れそうだ」との提案だった。ソニーが17年に本体から5.5メートルほど離せる試作機を見せると、同監督は「1メートルほどしか離せないと思っていた」と驚き、二人三脚で最新作の撮影に生かした。

ソニーの放送機器事業は「SONY」を世界に知らしめた歴史と重なる。1958年に白黒VTRの国産第1号を発表して以降、世界の放送局に広がっていった。82年には放送用カメラに参入し、現在も販売する。

一方で映画カメラは後発で、2000年に「シネアルタ」ブランドで世界初の映画用デジタルカメラを開発して参入した。この時もある監督の言葉がきっかけだ。

「映画のデジカメをつくってほしい」――。直々に頼んだのは「スター・ウォーズ」のジョージ・ルーカス監督だった。ソニーは神奈川県厚木市の拠点で総力を挙げて開発。同監督はシネアルタで「スターウォーズ・エピソード2」(02年公開)を完全デジタルで撮影、エンドロールに「サンクス・トゥー・ソニー厚木の技術者」と刻んだ。

ベニスは左右両方から操作できるなど、現場での使い勝手を追求する。ハリウッド中心部に近いDMPCでニーズを捉えるほか、「撮影現場に同行し、クルーの動き方を理解して潜在的な課題も抽出してきた」(ソニーの事業担当者の上田康夫氏)。22年には映画の名門校で、ルーカス監督らを輩出した南カリフォルニア大学と提携。次世代の感性も取り込む。

槙社長は「(ソニーが培ってきた)エレクトロニクスの技術で新たなエンタメをつくる」と語る。ベニスはロサンゼルスのビーチとハリウッド近くをつなぐ大通りの名称で、映画関係者の愛着を求めて製品名にした。

だが足元では逆風も吹く。ハリウッドでは脚本家と俳優陣が63年ぶりの同時ストライキを決行している。調査会社フォーチュン・ビジネス・インサイツは30年の映画カメラの世界市場が22年比で約6割増と予測。しかしストの影響は織り込んでいない。待遇改善や人工知能(AI)を巡るストが長びくと、市場の成長力だけでなく、カメラを進化させてきた力が弱まる懸念もある。

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