政府系ファンド産業革新投資機構(JIC)
恥ずかしながら、株式会社産業革新投資機構(JIC)の存在も、JSR株式会社も、知りませんでした…
JICの経営理念
JICは、オープンイノベーションによる企業の成長と競争力強化に対する資金供給を通じて民間投資を促進するとともに投資人材の育成等を行い、我が国の次世代産業を支えるリスクマネーの好循環を創出します。
<https://www.j-ic.co.jp/jp/>
JSRとは
Q:JSRってなんの会社?
A:化学を軸としたテクノロジーカンパニーですQ:私たちの想い
A:私たちJSRは、強みである高分子技術をベースに新たな事業を生み出し、顧客や社会の課題を解決し、社会をより豊かにしていくことを目指していますQ:JSRの3つの主要事業とは?
<https://www.jsr.co.jp/>
A:デジタルソリューション事業、ライフサイエンス事業、合成樹脂事業
(社説)政府系ファンドは半導体を再生できるか
(日経新聞 2023/06/28 朝刊記事)
半導体素材やバイオ関連の有力メーカー、JSRが政府系ファンドの産業革新投資機構(JIC)の100%子会社として再出発することになった。TOB(株式公開買い付け)を通じてJICがJSRの全株取得をめざし、上場廃止を経て業界再編などによる企業価値の向上をはかる。
日本では上場企業の非上場化が珍しいうえに、政府系ファンドがその会社のオーナーになるのは極めて異例だ。「経営の実験」ともいえる今回の手法が、戦略産業である半導体の活性化につながるのか、注目したい。
これまで政府系ファンドの扱った大型案件はJICの前身の産業革新機構によるルネサスエレクトロニクスへの投資や、日本航空への企業再生支援機構の出資など再建支援色の濃い案件が多かった。
それに対してJSRは自己資本比率は高く、利益も出ている。健全な企業がさらなる成長への踏み台として、政府系ファンドの力を借りるという発想は斬新だ。
JSRのエリック・ジョンソン社長は会見で「業界再編を先導したい」と表明した。日本には半導体部材の有力メーカーが多いが、JSRを含めて事業規模が小さいところが多い。今後研究開発などに要する投資額が膨らむなかで、再編統合を通じた規模の拡大は待ったなしの課題だ。
再編の過程で一時的に業績が下向いたり、借入金が増えたりしても、非上場企業であれば株主との合意形成が容易だ。
政府系ファンドの後ろ盾を得ることで、他社との協議が円滑化する効果もあるかもしれない。「日の丸再編」ではないが、政府の存在や意向をにじませることで、再編の正当性や必要性を交渉相手に納得してもらう戦略である。
JSRは物言う株主(アクティビスト)が大株主に名を連ねる。JICによる買収は政府系ファンドがアクティビストに売り抜けの機会を提供することにもなり、さらに丁寧な説明が求められる。
新生JSRの経営陣は非上場化で株主価値を引き上げ、再上場を果たすことで、政府系マネーの投入は正しい決定だったと国民の理解を得る必要がある。
半導体は「経済安全保障」の掛け声のもとで、日本だけでなく世界各国で公的資金の投入が相次いでいる。政府系マネーの安易な出動が投資の効率を損ねていないか、厳しいチェックが欠かせない。