丸亀シェイクうどん

丸亀シェイクうどんHPより

打ち出し方が素晴らしいと思いました。

うどんという和風なイメージを飛び出して、ポップな色使いとダンスを前面に押し出した広告が、タイパ重視の手軽なテイクアウトに結びついて、ヒットしそうな予感です。

米米CLUBの「Shake Hip!」は大好きな曲でしたが、アレンジがだいぶん違っているせいで言われるまで気が付きませんでした。

ヒットのクスリ丸亀製麺の「ファスト」うどん
コロナ機にタイパ追求

(日経新聞 2023/06/02 朝刊記事)

関西で人気のお土産の和菓子といえば、「赤福」を思い浮かべる人が多いだろう。以前、赤福(三重県伊勢市)の経営者になぜ商品が誕生したのかを聞いたことがある。江戸時代、赤福発祥の地では年間数百万人がお伊勢参りに訪れていた。参拝客が殺到すると、当時の飲食店では対応に大わらわになってしまう。

そこで大量に素早くつくれるように餡(あん)を餅の中ではなく、表面に塗ったのが赤福だった。実は汁のない「伊勢うどん」も同じ理由だ。めんをゆで続け、さっと「たれ」をかけて顧客に出すだけ。必要性に迫られて発明した「ジャパニース・ファストフード」というわけだ。

そんな食の伝統を、時を超えて受け継いだのが丸亀製麺の「丸亀シェイクうどん」だ。透明カップにうどんと具材、だしがあらかじめ入り、それを振る。すると、ほどよく混ざり、そのまま食べることができる。ちなみに伊勢うどんと違い、麺のコシは強めだ。

5月16日の発売から3日間で20万食を突破し、2021年に売り出したヒット商品「丸亀うどん弁当」(発売3日間で約19万食)を上回った。ただし発売早々、5種類のメニューのうち、サラダうどんに異物が混入。取引先の生野菜の加工工場での混入特定、謝罪、サラダ入りの2種類の販売中止、全工場検査、検品強化を急いで実施した。

それでも、うどんの持ち帰りでの新しい体験価値は変わらない。「ありそうでなかった」画期的な商品として、今は3種類を販売する。

さて、アイデアはどこから生まれたのか?

丸亀製麺の山口寛社長は「新型コロナウイルス禍でドライブスルーの店を作ることを決め、車内のホルダーに置ける専用商品が欲しかった」と話す。そこで23年初めに山口社長とマーケティング担当役員、商品開発担当者らで話し合っていると、「うどんを振ってみたらどうか」という案が出て、「ドライブスルーだけでなく、全国で広げよう」と盛り上がった。

当初、社内では「そんなの売れるのか」とネガティブな意見も多かったという。しかし「マイナスの意見が多いほど、売れる」と山口社長はゴーサインを出す。新型コロナが落ち着き、店舗事業を優先する考えもあったが、今後もテイクアウト事業は不可欠と判断。シェイクうどんをその柱に位置づけた。

CMも絶妙だ。起用したのは原菜乃華さん。最近、テレビドラマへの出演が増え、映画「すずめの戸締まり」の主人公の声優も務める。世になかった商品だけに知名度抜群の女優ではなく、フレッシュさを重視した。

しかも和食のうどんなのに、CMはポップなダンスを全面的に押し出す。携帯性の良さと、すぐに食べられるタイパ(タイムパフォーマンス)感。ただし曲は米米CLUBの「Shake Hip!」だ。1980年代の音楽で、レトロ感覚も染み込ませる。伝統食は新旧の時代の価値観と共振しながら、新たな味わいを創造できるのだ。

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