ペロブスカイト型太陽電池

脱炭素・エネ安保を両立
曲がる太陽電池の普及策

(日経新聞 2023/04/03 朝刊記事)

政府は次世代型の太陽電池「ペロブスカイト型」の普及を後押しし、脱炭素とエネルギー安全保障の両立を目指す。ウクライナ危機を受け、各国がエネルギー安全保障を強化する。再生可能エネルギーの主軸の一つの太陽光パネルを自国で調達できるようにする狙いがある。

日本人研究者が2009年に発明した技術だが中国メーカーが量産で先行しているとされる。中国のスタートアップ「大正微納科技」が22年7月に量産を始めた。英国のオックスフォード大発のスタートアップも効率の良い技術の開発を進めている。

国内でも積水化学工業や東芝が25年以降に量産を始める見込みだ。

従来の太陽光パネルは開発・実用化段階で日本が先行した。普及期に入ると中国企業が大規模に低価格で生産し、世界市場の8~9割を中国製が占める。

蓄電池でも似たような傾向がみられ、次世代型パネルは同じ轍(てつ)を踏まないようにする。

ペロブスカイト型の普及は経済安全保障上の意味合いも大きい。主原料となるヨウ素は日本が世界で第2位の生産量がある。供給網を日本でつくりやすい。太陽光の拡大を進める中で供給網の混乱で輸入ができない事態を防ぐ。

太陽光パネルの設置場所の拡大は脱炭素の懸案の一つだ。

政府は30年度に国内発電量に占める太陽光の比率を14~16%にする目標を掲げる。21年度の太陽光の比率は8.3%にとどまる。10年で2倍近くにする必要がある。

既存の太陽電池の普及が進み、山間部が多い日本ではこれから設置できる場所に限りがある。今は発電できない場所を使うことが欠かせない。

政府はこれまで主に次世代型を開発面で支えてきた。脱炭素技術を支援する「グリーンイノベーション基金」を通じて企業を後押ししてきた。

政府が新たにまとめる再生エネの導入拡大に向けた実行計画は開発にとどまらず、需要・供給の両面から普及期に産業競争力を高める対策を重視したのが特徴だ。

ペロブスカイト型は再生エネの「ゲームチェンジャー」になるとも指摘される。導入量の見通しなどが明らかになれば、さらに普及に弾みがつく可能性がある。

きょうのことばペロブスカイト型太陽電池 製造コスト、半額程度

▽…「ペロブスカイト」と呼ばれる特殊な結晶構造を持つ物質を材料に使う太陽光パネル。2009年に桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授が発明した。重さは現在、主流となっているシリコン型の10分の1で、折り曲げられるのが特徴だ。材料を塗って乾かすだけという簡単な製造工程のため従来の半額ほどで製造できると期待される。

<日経新聞 2023/04/03 朝刊記事>

▽…建物の壁や湾曲した屋根などにも設置できる利点がある。電気自動車(EV)やドローンに搭載して、電気を「自給自足」しながら動かす活用の仕方も想定される。どれだけ太陽光を電気に変換できるか示す変換効率は高まってきており、積水化学工業や東芝は15%を達成した。シリコン型は20%を超えるものがある。

▽…日本発の技術だが、量産化では海外勢が先行する。ポーランドのスタートアップ、サウレ・テクノロジーズが2021年5月に工場を開設した。中国の大正微納科技も22年7月に江蘇省で量産を始めた。生産規模はまだ小さく、今後、どれだけ歩留まりをあげて大量に生産できるかが競争のカギを握っている。

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