オープンイノベーションとIOWN
IOWNグローバルフォーラム
技術仕様を公開してパートナーを募るいわゆるオープンイノベーション方式。
そこで20年にソニーグループと米インテルとの3社で発足させ、今回最大のライバルKDDIとも「禁断の握手」。
IOWNってなあに?
最先端の光技術を使って、豊かな社会を創るための構想です。
次々と現れるテクノロジーを「意識しなくてもいい世界」がまもなくやってきます!
医療から金融、教育、交通、エネルギーまで、日常生活に恩恵をもたらします。
IOWN(アイオン):Innovative Optical & Wireless Network
ワールドワイドウエブ(WWW)が無償開放された1993年4月から30年。
インターネットという新たな産業で、日本は世界に劣後し続けた。その負の歴史をインフラで覆せるか。
NTT、「iモード」の苦い教訓 6G世界標準狙いKDDIと提携 親分体質から転換模索
(日経新聞 2023/03/12 朝刊記事)
NTTが次世代通信インフラの構築に向けて動き始める。超高速の「6G」で世界に勝負を挑むために、かつての唯我独尊的な姿勢を変えようと模索する。背景にあるのが、モバイル時代を先取りしながら世界標準となるチャンスを自ら逃した約20年前の失敗の教訓だ。リターンマッチに向けて選んだのが、最大のライバルとの「禁断の握手」だった。
NTTが温めてきた次世代通信の「IOWN(アイオン)」構想。通信網の信号をすべて光で処理することで消費電力を100分の1に、伝送容量は125倍にできる。
NTTは1960年代から研究を重ねてきたが、2019年に「光トランジスタ」を開発したことで実現のめどをつけた。そこで狙いを定めたのが6Gの世界標準の座だ。NTTはこれまで世界展開で後手に回ってきたが、手に入れた「夢の通信技術」で一気にばん回をはかる算段だ。
世界進出に向けて見直したのが従来の戦い方だ。まずは「完璧主義」との決別。減点主義的なお役所体質が残るNTTでは新技術の導入に慎重な姿勢が常々見られた。IOWNでも2030年の実用化を目指していたが、それではほぼ同時期に導入が進むと目される6Gには間に合わない。
そこで段階的に導入する方針に転換した。第1弾として16日に法人向けサービスを始める。
もうひとつが親分体質からの転換である。NTTは独占体だった電電公社時代から「電電ファミリー」と呼ばれる企業群を率いてきた。現在もその筆頭格のNECに出資するなど関係性は深い。だが、国内連合では世界標準はおぼつかない。
そこで20年にソニーグループと米インテルとの3社で発足させたのがIOWNグローバルフォーラムだ。技術仕様を公開してパートナーを募るいわゆるオープンイノベーション方式には、実は「先生」がいる。米グーグルだ。NTTはかつてグーグルから握手を持ちかけられながら独自の技術にこだわり、世界進出のチャンスを逸した痛恨の失敗の記憶がある。
子会社のNTTドコモが1999年に始めた「iモード」。世界に先駆けて「手のひらに収まるインターネット」を実現した画期的な発明だった。日本で爆発的に成長すると06年、当時グーグル最高経営責任者(CEO)のエリック・シュミット氏が来日して提携を持ちかけた。
だが、ドコモは明確な回答を避けた。
するとグーグルは08年にスマートフォンOS「アンドロイド」を実用化した。この際に米アップルのiPhoneに対抗するために取り入れたのがフォーラム形式によるオープンイノベーションだった。ドコモも参加したが時すでに遅し。スマホが日本にもやってくるとiモードはあっという間に忘れられた。
IOWNを6GインフラにすべくNTTが「後追い」したのが、まさにグーグルの戦略である。
ここにKDDIが加わった。同社はもともとNTTへの対抗軸として1984年に発足した第二電電を源流のひとつに持つ。そのKDDIがNTTと握手した。両社が合意書を結ぶ形で提携するのは初めてだという。
ワールドワイドウエブ(WWW)が無償開放された1993年4月から30年。インターネットという新たな産業で、日本は世界に劣後し続けた。その負の歴史をインフラで覆せるか。米中対立が鮮明となり通信業界でも不透明感が増す中で生まれた「禁断のファミリー」の戦いが始まる。