「中堅・中小企業に対する 粉飾決算の見分け方」
図書館で借りて読んでみました。久々に実践的な良書に出会えました。
まず第1章は、丁度、令和4年度の確定申告を「やよいの青色申告オンライン」でe-tax済ませたばかりな事のもあって、中小企業の節税対策ノウハウのポイントが凄く良く判りました。ここは、FPの資格勉強が賢く生きていく上で一番役に立つと思いました、お金まわり重要。
第2章~第4章は、簿記の勉強と診断士の勉強のお陰で理解がし易かったです。
第5章は、この本で一番価値のあるところ。ケーススタディによって粉飾決算の作り方/見分け方のポイントを解説してくれています。
目次
第1章 中小企業における収益力の分析方法
1 金融機関等が行っている財務分析の問題点
2 中小企業にとって利益とは
※個人事業主から法人成りすると税の負担が軽くなる
法人成りの後、会社の利益を個人に「役員報酬」として支払うことで
・会社の当期純利益を最小化して法人税負担を減らす
・個人の所得税も「事業所得」から「給与所得」へ変更することで節税となる?
(役員報酬額ー給与所得控除額200万円)x所得税率
3 法人と個人を一体判断する際の問題点
4 会社の収益力を落ちてきたときに現れる兆候
5 役員報酬等の金額からわかること
6 役員報酬におる業績判断で注意すべきポイント
7 経営者一族が受け取る地代家賃について
※役員報酬でなく「地代家賃」を増額することによっても法人税などの負担回避ができる
社長が会社から地代家賃を多くもらえば、個人的には得をするし、
その分だけ会社の経費が増えるため、法人税も少なくなる
8 経営者一族の節税等
9 配当金について
※中小企業で経営者一族が会社から配当金によって利益を得る方法は採用されない
配当金を行っても、支払った配当金は法人税法上で経費にならないため、
ほとんどのケースで法人税等の節税に役立たないから
10 もう1つの簡単な収益力判定方法 ー 交際費
11 さらに収益力がアップすると
12 役員退職金
※退職金にかかる所得税は、他の所得と比較してかなり優遇されています
ですから、経営者個人が会社から利益を得る場合に、「退職金」は上手に利用したい
一方で、課題な役員退職金については、”その課題部分だけ”法人税法上で
費用計上できないため、法人税等の節税メリットが得られない
したがって、法人税法上で過大と認定されない目一杯まで役員退職金をもらう
費用計上できないため、
13 所得、税務上の繰延欠損金とは
14 節税効果の繰り延べ
15 節税保険等の活用
※払った金額の多くが何年か後に解約返戻金をして戻ってくる「生命保険」に入る
保険を解約する際に多額の保険解約益が計上されるため、
そのタイミングで役員退職金をもらうとか、工場の移転などによる相当額の損失が
出るように計画しておかないと、保険解約益に対する法人税等が一気にかかってくるので注意
但し、節税効果の高い既存の生命保険商品は、令和3年までの税制改正よって
大きく制限がかけられたので、これからの利用はほとんど無くなる
一方で、投資組合契約などを利用した節税商品は今でも利用されているし、
今後も新しい節税商品が出てくるかもしれない
16 多額の法人税等を支払っていることに対する評価
17 法人税等を伴わない利益
第2章 中小企業における粉飾決算書の分析方法
1 業績悪化徴候の把握
2 決算書が作成される過程
3 利益調整と粉飾決算
4 業績悪化への決算対応
5 粉飾処理の方法
6 見落としてはいけない粉飾とは
7 粉飾決算を見抜くポイント
8 貸借対照表と損益計算書の関係
※たとえば売上高が1億円(100百万円)の会社があったとしましょう。
月商はおおむね8百万円です。
現金預金は、月商の8百万円は確保したいため、とりあえず10百万円。
売上債権は、改修までの月数が4ヶ月として32百万円。
棚卸資産は、在庫回転月数は3ヶ月として、それに原価率(仮に80%程度)を乗じて19百万円。
有形固定資産は従業員10名程度に必要と思われる分として15百万円。
その他資産はもともと多額ではないことが多いため、とりあえず4百万円。
資産合計は結果として売上高と比較的近い数字の80百万円。
9 不良資産の増加傾向を見抜く
10 注意が必要な粉飾決算とは
※中小企業の財務分析において、注意を要する主な粉飾決算は、
「在庫の水増しによる棚卸資産の過大計上」と
「架空売上による売上債権の過大計上」
だけと言っても過言ではありません。
11 減価償却費の未計上、その他の粉飾方法
12 損をしたり儲かったりする会社の決算
13 損をし続けている会社の決算
14 長期間のデータで検討する
15 在庫と売上債権の回転日数
16 回転日数で検討する
17 在庫の水増しによる粉飾決算
※在庫を水増しするとは、貸借対照表上で棚卸資産の評価額を過大にすることです。
期末にある在庫は、その金額を集計した上で、
(借)期末棚卸資産 ⅩⅩ円 / (貸)売上原価 ⅩⅩ円
という仕訳によって、資産計上されるとともに、その金額だけ売上原価が減額されます。
18 不良在庫と在庫の水増しの違い
19 架空売上
20 内訳明細書のチェック方法
※架空売上の可能性が高いと思われる場合には、売上債権の内訳明細書を確認することが大切です。
(借)売掛金 ⅩⅩ円 / (貸)売上高 ⅩⅩ円
と粉飾の仕訳をいれると、決算書は簡単に粉飾できて、その金額分だけ利益は増額できます。
21 中小企業の決算書分析における基本のまとめ
22 中小企業にとって収益力とは
※経営者一族が会社から経済的便益をどれだけ受けられるかで判断することが大切です。
収益力=会社の計上利益+経営者一族が受ける役員報酬等の経済的便益ー1年あたりの粉飾額
第3章 その他の留意事項
1 粉飾用の別の決算書が作られている?
2 利益率に注目する
※ほとんどの中小企業は、毎期少額の利益計上をするように、決算書を作成しようとしているのです。
社長が妥当と思う利益の水準は、一般的には
税引前利益で売上高の0.5%
課税負担が売上高の0.2%
税引後の当期純利益が売上高の0.3%
くらいです。
3 利益だけをみて安心できる会社とは
4 利益の金額で判断するリスク
5 決算書が複数ある会社
6 赤字の決算書を作成する会社
7 赤字を計上する意味
8 月次試算表の信頼性
9 月次試算表の財務分析
10 月次試算表の正しい分析方法とは
※月次試算表は毎月取り寄せて、そのトレンドを毎月確認すれば財務分析に使えます。
そうでなければ、まずはキャッシュフローの分析(第4章)を行うのが良いです。
11 複数の会社を経営している場合
12 連結決算について
※(コピーした表・文章を見る)
第4章 キャッシュフロー分析の基本
1 中小企業のキャッシュフロー分析
2 キャッシュフロー分析からわかること
3 キャッシュフロー分析の方法
4 具体的なキャッシュフローの算出方法
① 売上高に対する今期の入金額
② 売上原価に対する今期の支出額
③ 販売費及び一般管理費に対する今期の支出について
④ 営業外損益、特別損益に対する今期の入金額および支出額
⑤ 結論および留意点
5 キャッシュフロー分析の留意事項
6 固定資産に関するキャッシュフローの考え方
7 キャッシュフロー分析の位置づけ
第5章 粉飾決算を体験してみよう
1 粉飾処理をやってみる
※(以下、コピーした表・文章を見る)
2 粉飾処理をイメージ
3 粉飾処理の優先順位
① 交際費の一部取消し
② 過去にさかのぼった地代家賃の改定
③ 支払保険料の会計処理変更
④ 在庫の評価方法変更
⑤ 架空売上
4 利益調整から粉飾処理へ
5 粉飾決算に現れやすい長期のトレンド
6 回転日数と粗利益率について
7 粉飾決算書に対する財務分析
第6章 財務分析ケーススタディ 粉飾決算を見分けるためのトレーニング
1 典型的な粉飾決算のケース
① 売上高・当期純利益の推移
② 不良資産のチェック
③ キャッシュフロー分析
2 税務上の繰越欠損金を意識した粉飾決算のケース
① 損益計算書の分析
② 利益調整の金額の把握
③ キャッシュフロー分析
④ なぜ赤字決算にしたのか
⑤ 直前3期分の決算書しか見なかった場合
3 建設業における粉飾決算のケース
① 事例企業の概要
② 特別損失に注目する
③ 売上債権(未成工事未収入金)、未成工事支出金
④ 土木建築業界の留意点
⑤ 不安定な財務内容
第7章 金融機関における財務分析業務
1 財務分析に有用なデータの扱い
2 システム対応と手作業対応
3 自己査定ルールとの関係
Column
会社を食い物にする?
財務分析の結果と融資判断
試算表の信頼度
改善すべきはキャッシュフローか収益力か
粉飾の善悪
粉飾を見抜くために