全固体電池
課題が出てきてなかなか上手くいかないようです…
全固体電池、開発遅れ
「次世代電池の大本命」日本、迫られる政策転換
(日経新聞 2023/01/31 朝刊記事)
「次世代電池の大本命」とされてきた全固体電池は開発が遅れ気味だ。背景には大きく3つの技術的な課題があり、いまだ解決できていない。全固体電池の開発に傾倒してきた日本は、従来の電池技術で中韓に逆転を許して政策転換を迫られる事態にもなっている。国や企業は今後、資金や人的資源をどこにどれだけ投資するのかより慎重に見極める必要がある。
全固体電池はリチウムイオン電池の液体電解質を固体に置き換えたもの。発火の危険性が低く、セルを容易に積み重ねられるため体積あたりの蓄電量を3倍にできるとされる。次世代電池の主役に躍り出たが、3つの課題が立ちはだかる。
1つ目は充放電により電極が膨張収縮すると固体電解質との界面が離れ、性能が低下する問題だ。2つ目に、そもそも固体電解質の中では電気を運ぶイオンが動きにくい課題がある。
固体電解質の中でも硫黄系の材料はイオンが比較的動きやすいと期待されている。ただ、電池の製造時や故障時に有害な硫化水素を発生する可能性があるのが3つ目の壁だ。
全固体電池は当初、2020年代前半のEV搭載を期待されたが、開発が遅れた。ホンダや日産自動車は20年代後半にEV搭載をめざす。関連特許で世界最多の出願数を誇るトヨタ自動車は20年代前半にハイブリッド車で実用化をめざすが、EVへの搭載時期の目標は20年代後半を掲げる。
韓国の大手電池メーカー、サムスンSDIの元常務で現在は名古屋大学客員教授の佐藤登氏は「全固体電池は次から次に課題が出てくる。EVで実用化するとしても30年以降になるだろう」と慎重に見通す。
従来の電池開発がおろそかになった弊害も出てきた。経済産業省は22年3月に実施した官民協議会で、これまでの「全固体電池に集中投資」する政策について異例の反省の弁を述べた。
中韓の企業が従来の電池の技術や競争力で日本を逆転したことで「全固体電池の実用化に至る前に、日本企業は疲弊し、市場から撤退する可能性」があると言及。液系電池の生産基盤強化への大規模投資に対し支援を行う方針を打ち出した。
LFPなど旧来の技術を使った液系電池の進歩は近年著しく、全固体電池との開発競争は激しい。どの電池が主導権を握るかはまだ見通せない。国や企業は様々な電池の技術動向をにらみながら開発を進めることが必要になりそうだ。