今日の日経新聞ピックアップ(2023/1/6)

  1. 中小GX、金融で促進
    政府、実効性踏まえ低利融資 地銀職員に助言資格も

    ・政府は中小企業のグリーントランスフォーメーション(GX)を促進する制度を設ける。実効性のあるGX計画を策定した企業への低利融資や、地銀の職員が企業の脱炭素化を支援できるようにアドバイザー資格も創設する。大企業が取引先のサプライチェーン(供給網)を含めた排出量である「スコープ3」の管理に注力するなか、金融の力で中小企業のGXを加速させたい考えだ。
    ・金融庁、経済産業省、環境省はGXに向けた資金供給のあり方について、2022年8月から研究会で議論していた。22年12月に中小向けも含めた施策の方向性をまとめたパッケージを公表した。23年以降、詳細を詰めて順次実施する。
    具体的には、中小向けに新たな融資メニューを創設する。自社のGXに向けた事業計画や資金使途が承認されれば、日本政策金融公庫から通常より低利で融資を受けられる。計画には資金を設備交換などにまわすことで、「5年後の温暖化ガスの排出量を22年比で30%削減する」といった内容を盛り込む。融資の規模などは今後調整する。
    金融機関の人材育成も促す。地銀や信用金庫の職員が中小の脱炭素化を支援できるよう、「アドバイザー資格認定制度」をつくる。温暖化ガス排出量を測定するノウハウや排出量の削減策を助言できることなどが条件となる。
    中小には脱炭素化のノウハウが乏しく、大企業のように専門人材を確保する余地は限られる。取引先企業の経営に精通している金融機関の支援は欠かせない。伊予銀行は脱炭素に積極的な企業への融資に注力しており、21年度の再生可能エネルギー関連融資額が18年度の2倍を超えた。
    日本全体の温暖化ガス排出量のうち、中小は2割弱(約2.5億トン)を占める。ただ現状、中小の約8割は具体的な方策を検討する段階に至っていない。大企業に比べて財務基盤が安定しておらず、初期コストのかかるGXへの投資をためらう経営者が多いことが大きな理由だ。

    ・さらに情報や人材などのリソース不足も大きな足かせとなっている。商工中金のアンケートでは、カーボンニュートラルへ向けた対応方法や他社の取り組み事例などに関する情報が乏しいと答えた中小が約4割あった。
    ・政府は50年までのカーボンニュートラル実現を目指している。自社の企業活動に伴う排出量である「スコープ1」「スコープ2」に比べ、中長期の課題である「スコープ3」では大企業などが自社の供給網の排出量まで管理する必要がある。トヨタ自動車は50年までの環境目標として部品製造から物流、リサイクルまでの排出ゼロを目指している。
    ・中小にとって、GXの取り組みが長い目で重要な経営課題になっていくのは間違いない。自動車産業など大企業が供給網全体での温暖化ガス排出量削減を目指すなか、中小のGX推進は取引を続ける上で欠かせない要素になる。前向きな取り組みは、新規の取引先開拓につながる可能性もある。当初は投資が先行するが、中長期的にはエネルギーコストの削減も見込める。
    ・金融庁幹部は地方や中小のGXは「総力戦で取り組むことが必要だ」と話す。地銀や信金だけでなく、商工会議所など地域の経済団体や財務局、経済産業局といった関係省庁の地方支分部局とも連携していく考えだ。
  2. 米テック、拡大路線を転換 アマゾン1.8万人削減
    セールスフォースは7000人 利上げで株価下落

    (前略)
    ・米テック企業は08年の米金融危機以降、ほぼ一貫して事業を拡大させてきた。20年に新型コロナウイルスの感染が拡大すると巣ごもり消費などで需要が急増、「パンデミック(新型コロナの世界的な流行)後もオンライン化が一段と進むと予想し、投資を増やした」(メタのマーク・ザッカーバーグCEO)。
    ・だが特需は一過性に終わり、22年7~9月期決算では大手5社のうち米アップルを除く4社が減益となった。
    ・コロナ下で世界の中銀がとったゼロ金利政策の転換が進み、金利の急上昇で景気の減速感も強まる。金利上昇は成長期待からテック株に流れていた投資マネーの逆回転につながっている。業績悪化が顕著なメタの株価は22年初めから約6割、米アルファベット(グーグル持ち株会社)やアマゾンも約4~5割下落する。
    株価下落で米欧のアクティビスト(物言う株主)はメタやアルファベットにコスト削減による収益改善を求めている。
    ・アクティビストが指摘するのは巨大テックの人件費の高さだ。英有力アクティビストのTCIファンド・マネジメントはアルファベットのスンダー・ピチャイCEOに対し、従業員の報酬がテック業界の時価総額上位20社の中央値(11.7万ドル)の2.5倍に達すると批判する書簡を送った。
    ・ゼロ金利下での株価上昇局面では巨大テックは株式報酬も含め資金力で人材を囲い込んできた。3年でメタの従業員は2倍に、ツイッターの従業員は9割増えていた。
    ・事業見直しも進む。グーグルは11月末、ゲーム配信サービス「スタディア」の利用者に「事業停止に伴う機器購入代金の返金を2週間以内に始めます」と通知した。19年に米国などでサービスを始めたが利用者は伸び悩み、22年9月に事業中止を決定。先端開発部門のプロジェクト数を半減することも決めている。グーグルのピチャイCEOも「本来はもっと早くやめるべき事業があった」と振り返る。
    ・メタやアルファベットの収益源であるネット広告は景気減速だけでなく、プライバシー規制の強化にも影響を受ける。
    ・欧州当局などは米テック大手が高いシェアを持つ世界のネット広告やSNS(交流サイト)でのデータの独占に対して監視を強めている。法令に違反した場合は巨額の制裁金を科されるほか、規制に対応することでネット広告の精度が下がり広告の単価も落ちるため、これまでのような高い収益をあげられなくなる。
    創業から年月がたち、巨大テックのビジネスモデルは成熟化しつつある。スマートフォンは価格が上昇する一方で、消費者が驚くような革新は起こしにくく、ネット通販やサブスクリプション(定額課金)も景気減速や競争激化の影響を受ける。各社ともこれまでのような高成長を続けることは難しくなっている。

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