今日の日経新聞ピックアップ(2022/12/14)

  1. ゼロゼロ融資 残ったツケ(上) 迫る返済、息切れ倒産増も支援43兆円、積み上がる負債 円安・物価高が追い打ち
    新型コロナウイルス感染拡大で打撃を受けた企業を底支えした「ゼロゼロ融資」の新規実行が2022年で終わり、23年には返済開始の山場を迎える。約43兆円にのぼる金融支援で企業負債が歴史的水準まで積み上がったところに円安や物価高が直撃。低く抑え込んできた倒産は増加に転じた。コロナで生じたひずみを前に、政府や金融機関は難しいかじ取りを迫られている。
    ・「借金で押しつぶされる思いだった」。都内で運送関連会社を経営していた60歳代の男性はこう話す。会社は2022年秋、東京地裁から破産開始決定を受けた。負債総額は約1億円で、大部分は実質無利子・無担保のゼロゼロ融資だった。
    ・ゼロゼロ融資はコロナ禍で売上高が減少した企業を支援するため20年3月に始まった。最長5年まで元金の返済を猶予し、最初の3年間は各都道府県が利子を補給することで企業側の利払いを実質免除。将来返済が滞れば公的機関である信用保証協会が肩代わりする。22年9月末までに民間と政府系金融機関で計約43兆円の融資が実行された。
    ・この男性の会社は食品倉庫などから作業を請け負い、ピーク時にはアルバイト含め30人程度の従業員を抱えていた。コロナ後に飲食店やホテル関連の受注が減ると、2億円程度あった売上高は3分の1に減少。「将来に備えて目いっぱい借りた方がいい」と地元の信用金庫から言われ、20年に民間と政府系の3行から合わせて9000万円近く融資を受けた。
    ・「借りる側も貸す側も、いつか元通りになると信じていた」。実際には2年近くたっても受注は回復せず、取引先開拓もうまくいかなかった。約15年にわたり経営してきた会社の廃業を決断し、自身も個人破産した。
    ・この時期に廃業を決めたのは、22年末にかけてゼロゼロ融資の返済が始まる予定だったこともある。地元の信金からは返済猶予を提案されたが、将来受注が完全に戻るとは思えない。平均賃金が上昇し、コロナ前の給与水準で人材募集しても集まらなかった。いずれ行き詰まるなら、早い方がよいと考えた末だった。
    ・新型コロナの影響が和らぐのと逆行する形で、企業倒産が増えている。特に目立つのが、コロナ関連融資で食いつないだ企業が過剰債務で再建を断念する「息切れ型」倒産だ。帝国データバンクがコロナ関連融資を受けた後に倒産した企業を調べたところ、1~11月は合計で353件と前年同期の2.4倍になった。
    ゼロゼロ融資を受けた企業の大部分は1年以内に返済し始めた半面、コロナの影響が厳しい業界では返済猶予を3年程度に設定したため、23年に返済開始を迎える企業は多い。コロナ禍で疲弊したところに円安や物価高、人手不足などの課題が重くのしかかり、さらにゼロゼロ融資の返済時期が近づいたことで再建を諦めるケースが広がる。
    ・東京商工リサーチによると、倒産件数は11月まで8カ月連続で前年を上回り、22年通年では3年ぶりに前年を上回る公算が大きい。年末から年度末にかけて企業倒産の増勢が強まると予想する。
    ・海外でも問題は顕在化し始めている。米国ではコロナ禍で21年1月まで米連邦準備理事会(FRB)が中小企業向け融資を支援する「メインストリート融資プログラム」を実施したほか、21年5月まで米中小企業庁が雇用を維持することで返済を免除する中小企業向け融資に約103兆円を投じた。
    ・短期集中型の支援で倒産を抑えたが、破産申請件数は8月から4カ月連続で増加傾向にある。インフレに対処するための積極的な利上げで、資金繰りが苦しくなっている企業が出ている。
    ゼロゼロ融資で倒産の急増は防ぐことができた。だがその結果、到底返済できない規模の負債を抱える「ゾンビ企業」を多く生み出した恐れがある。ノーリスクで融資ができる制度を長く続けたことで、一部の金融機関では不正な融資も起きた。ゼロゼロ融資の功罪について、検証が必要な局面に来ている。
  2. きょうのことばロジック半導体 スマホやパソコンの頭脳
    ▽…スマートフォンやパソコンにCPU(中央演算処理装置)などとして搭載され、電子機器の「頭脳」の役割を担う。回路を微細にしてトランジスタ(素子)の数を増やし計算能力を高めてきた。米アップルの「iPhone」に使われている最先端半導体には160億個のトランジスタが敷き詰められている。
    ▽…半導体にはデータを保存する「メモリー」温度などの情報をデジタル信号に変換する「アナログ」など4分野ある。ロジック半導体は付加価値が最も高く、2021年の世界市場規模は1548億ドル(約21兆円)と半導体全体の3割弱を占める。日本にはメモリーなどの工場はあるが、最先端のロジック半導体の工場はない。
    ▽…最先端のロジック半導体の生産には1工場当たり1兆円を超える巨額投資が必要となる。量産できる企業は台湾積体電路製造(TSMC)や韓国のサムスン電子などに限られる。米中対立の激化などで経済安全保障上の重要性が高まり、TSMCの工場を熊本県に誘致するなど政府も国産化を後押ししている。

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