今日の日経新聞ピックアップ(2022/11/28)

  1. きょうのことばエネルギー安全保障 自給率の向上欠かせず
    ▽…社会経済活動に必要な石油や天然ガス、電気などのエネルギーを安定的に確保し、供給できるようにすること。各国は1970年代の石油危機を教訓に、エネ安保への意識を強めた。資源高を受け、妥当な価格で供給できるかが重要な視点となった。ウクライナ危機で、資源国のロシアからガスや石油を輸入できなくなるリスクにも各国は直面している。
    ▽…日本は加工していない段階の「1次エネルギー」の8割ほどを化石燃料が占め、そのほぼ全量を輸入している。供給が途絶えたり、輸入価格が急激に上がったりすれば、大きな影響を受けかねない。
    ▽…地下資源に乏しい日本にとって、エネルギー自給率の向上がエネ安保の観点で欠かせない。欧州などは再生可能エネルギーや原子力による発電で自給率を高めようとしている。日本の自給率は20%前後で推移してきたが、2011年の東日本大震災による原発事故とその後の稼働停止を受けて7%弱まで下がった現在も1割台にとどまっている
  2. 第4の革命 カーボンゼロ試練の先に(上)
    再エネ、危機下で急浸透
    今年上期、CO22億トン排出回避 「自国産」安保に貢献

    ロシアのウクライナ侵攻で世界のエネルギー環境が大きくかわった2022年。エネルギー安全保障の重要性が再認識される一方で、異常気象が相次ぎ、気候変動対策を急ぐ必要も高まっている。世界は試練の先を見据え、エネルギーの安定供給と脱炭素の両輪を加速させている。
    ・ウクライナ侵攻以降、光熱費が2倍になり、閉店が迫られるパブが相次ぐ英国。電気代高騰の負担を抑えようと自宅の屋根に太陽光パネルを設置する家庭が急増している。業界団体のソーラーエナジーUKによると住宅の屋根に取り付けられた容量は1~6月だけで16万4000キロワット。既に昨年1年間分を超えた。
    ・国際エネルギー機関(IEA)は10月、22年の世界の二酸化炭素(CO2)排出量が前年比で1%弱の増加になる見通しだと公表した。まだ増えているが、4%増えた21年に比べれば鈍化した。
    ・再生可能エネルギーの普及の加速が一因だ。IEAは10月、22年の再生エネ発電容量の伸び率の予測を5月時点の前年比8%から20%に引き上げた。現状の政策を進めるだけでも、世界全体の発電量は30年に21年のざっと2倍になる。米中は2倍前後、インドは3倍近くになるという。

    「輸入頼み」転機
    ・ロシアのウクライナ侵攻に端を発するエネルギー危機は、化石燃料の輸入に頼る国々を右往左往させた。自らのエネルギー構造を見直すきっかけになった。
    気候変動ではなく、エネ安保が各国をクリーンエネルギーにシフトさせている。IEAのビロル事務局長はこう分析する。再生エネは自国領内に吹く風や、降り注ぐ太陽で電気をつくることができ、自国産エネルギーになる。
    ・欧州連合(EU)の環境政策担当のシンケビチュウス欧州委員も日本経済新聞の取材に再生エネへの移行は「安全保障への戦略的投資にもなっている」と話す。
    ・資源高で相対的に再生エネのコストが下がったことも大きい。欧州の天然ガスは22年に前年の一時20倍以上の価格をつけ、石炭も過去最高値を記録した。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は「化石燃料の競争力が大幅に低下し、太陽光や風力が魅力的になった」と指摘する。
    ・シンクタンクのエンバーによると22年1~6月の風力と太陽光の伸びにより、世界では2億3000万トンのCO2の排出が回避されたという。中国では前年から増えた電力需要分の92%を風力と太陽光で賄い、米国でもその割合は81%だった。

    送配電が課題に
    ・再生エネ普及にも課題はある。「許認可は迅速な普及を阻むボトルネックの一つだ」。EUの欧州委員会はこう指摘する。第27回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP27)の期間中、再生エネ事業を承認する手続きを一時的に簡素にするよう加盟国に提案した。
    ・インフラも脆弱だ。ベトナムでは再生エネの急拡大により送電線が足りず、再生エネなどの発電をとりやめる「出力制御」が起きている。国営の給電指令所は22年1月、新しい太陽光と風力を追加することができないとの見通しを示した。
    ・IEAは21年、世界の温暖化排出量を50年時点で実質ゼロにするためには、送配電網への年間投資を30年時点で8200億ドル(114兆円)に引き上げることが欠かせないとの見解を示した。今の3倍以上の水準だ。
    ・英BPによると21年の再生エネ発電量は1985年の約4倍に増え、世界全体の28%を占める。ただ石炭火力は36%、ガス火力は23%と、なお化石燃料は多い。再生エネは天候に発電量が左右され、当面はガス火力での需給調整が欠かせない。発電時にCO2を排出しない原発を活用する動きも広がる。
    ・日本は21年度の再生エネ比率が前年度から0.5ポイント増え、ようやく20%台に乗せた。火力発電が7割を超える。東日本大震災の教訓も生かせず東西で融通できる電力量は限定的だ。政府はガソリンや電気代の負担緩和に予算を投じるが、送電網の整備などに力点を置くべきだとの指摘もある。
    ・世界が安保やコストの観点から再生エネにカジを切る中、ただでさえ出遅れていた日本は引き離されかねない。COP27ではパリ協定の「1.5度目標」を追求していくことを再確認した。再生エネを拡大しつつ、あらゆる手段を総動員する必要がある。
  3. アンモニア燃料船、基本設計の承認得る
    伊藤忠・NSYなど、26年建造目指す

    ・伊藤忠商事や日本シップヤード(NSY、東京・千代田)などは、開発するアンモニア燃料船の基本設計承認を日本海事協会から得た。アンモニアは燃焼時に二酸化炭素(CO2)を出さない燃料として注目され、国内外で燃料船の開発が進む。燃料にアンモニアを使う船はまだなく、2026年の建造を目指す。脱炭素技術で先行し、世界シェアを争う中韓勢からの巻き返しを図る。
    ・承認を得たのは鉄鉱石輸送などに使う積載量20万トン程度の大型ばら積み船。燃料アンモニアのタンクを船上に配置する。国立研究開発法人の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に採択された事業の一環で詳細は今後詰める。
    ・アンモニア燃料船は国際規則も定まっていない。既存の規則で定められている安全性と同等のものを確保できていることを立証し、国土交通省の承認を得る「代替設計承認」を今後取得する。
    ・伊藤忠などは次世代燃料としてアンモニアに注目。建造したアンモニア燃料船は伊藤忠や川崎汽船がジョイントベンチャーをつくり、保有・用船する計画を打ち出している。

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