今日の日経新聞ピックアップ(2022/11/23)

  1. 再生エネ、初の20%超  経産省、昨年度の電源構成 欧州・中国には後れ
    ・経済産業省は22日、2021年度の電源構成(速報値)を発表した。年間の発電電力量のうち再生可能エネルギーの割合は20.3%と初めて2割を超えたものの、4割を超える欧州主要国や3割近い中国より低い水準だ。火力発電に大きく依存する構造が続いており、二酸化炭素(CO2)排出量は20年度から1.2%増と8年ぶりの増加となった。
    ・21年度の発電電力量のうち化石燃料を使う火力発電72.9%にのぼった。燃料の内訳は天然ガスが34.4%、石炭が31.0%、石油が7.4%だった。火力全体では20年度の76.3%から低下したものの、なお7割を超える。
    原発の比率は6.9%になった。稼働が増えたため20年度から3ポイント増えた。
    再生エネは0.5ポイント増え20.3%になった。内訳をみると太陽光がもっとも多い8.3%で0.4ポイント増。風力は前年度と変わらず0.9%水力は微減の7.5%だった。
    発電電力量は全体で1兆327億キロワット時で20年度から3.2%増えた。新型コロナウイルス禍から経済活動が回復して電力需要が戻った。火力の比率は低下したもののCO2排出量の多い石炭と石油の発電量が増えたため、エネルギーを起源とするCO2の排出量も増えた
    ・排出量は東日本大震災後の13年度に12億3500万トンまで増え、その後は減少傾向にあった。政府は30年度に13年度比46%削減する目標を掲げている。21年度は13年度比で20.7%の削減だった
    ・国際公約の達成は再生エネの導入拡大が欠かせないが、日本の再生エネの電源構成比率は海外主要国と比べて低い。経産省によると欧州では20年時点でドイツが43.6%英国が43.1%だった。CO2排出量が世界で最も多い中国でさえ日本を上回る27.7%だった。米国は20年で19.7%で日本と同水準にある。

    日本政府は排出削減目標の達成に向け、21年のエネルギー基本計画30年度の電源構成のうち再生エネを36~38%に、原子力を20~22%に高めると決めた。
    ・いずれも達成に向けたハードルは高い。再生エネのうち太陽光の目標達成には発電量の増加ペースを現行水準でおおむね維持する必要がある。土地の確保が難しくなっているなかでどのように拡大させ続けるかが課題となっている。
    風力は21年度の発電量から5倍以上に増やさないと目標に届かない。経産省は洋上風力を再生エネの主力電源化の切り札と位置づけ、秋田県や千葉県などでの導入を計画する。国内で大規模な洋上風力の開発実績は乏しく、順調に進むかはまだ見通せない。
    原子力も目標の達成には30基近くの原発の稼働が必要になる。現状はまだ10基体制で今後4基が加わる見通し。ただ東京電力ホールディングスの柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)など原子力規制委員会の安全審査に合格したものの地元の同意が得られず再稼働のめどが立っていない原発もある。再稼働が進むかは見通せない状況だ。
    • 車会社、非化石電源59%に  経産省、30年度目標 再生エネ転換急ぐ
      経済産業省は22日、自動車メーカーが使う電気のうち再生可能エネルギーや原子力など非化石電源の割合2030年度までに59%にする新たな目標を設ける方針を固めた。現状は2割前後とみられる。2023年4月に施行するエネルギー使用合理化法に基づく数値目標とし、非化石への転換が著しく不十分な場合は勧告や公表もできる。
      ・22日に総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)省エネルギー小委員会の作業部会を開いて提案し、大きな異論はなかった。非化石電気には再生エネと原子力に加え、燃やしても二酸化炭素が出ない水素やアンモニアも含める。
      ・経産省によると業界のエネルギー使用量のうち6割が電気という。今回の目標は外部調達分と自家発電分をあわせた全体の電気使用量のうち59%を非化石にする内容だ。自家発電に使う太陽光の導入や非化石電気の調達といった取り組みを促す。
      ・政府は30年度の温暖化ガス排出量を13年度比で46%削減するために、30年度の発電量に占める非化石の割合を59%に引き上げると掲げている。今回の自動車メーカー向けの新目標はこれに沿ったものになる。
    • 三菱ケミ、EBITDA比率18%以上へ
      1000億円事業縮小を検討 26年3月期めど、低収益品で


      EBITDA=企業価値評価の指標で、利払い前・税引き前・減価償却前利益(Earnings before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization)のこと。
      簡便には営業利益に減価償却費を加えて計算する。
      1年間の営業キャッシュフローに相当する

      ROICReturn On Invested Capitalの略称で和訳は投下資本利益率。企業が事業活動のために投じた資金を使って、どれだけ利益を生み出したかを示す指標。
      一般的な計算式はROIC=(営業利益×(1-実効税率))÷(株主資本+有利子負債)
      企業は、株主から預かった株主資本(自己資本)と銀行などから借り入れた他人資本を投下して事業を行う。株主資本に対する当期純利益の割合を示すROE(自己資本利益率)に対して、投下資本利益率は、他人資本である有利子負債も含む実質的な投下資本からどれだけ効率的に利益を稼いだかを測るための指標である。


      ・三菱ケミカルグループは2026年3月期までに売上収益(売上高)ベースで1000億円規模の事業撤退・縮小を検討する。対象は高機能材料の中でも低収益な事業。化学品の国内需要が縮小するなか将来の石油化学(石化)事業分離後を見据え、車載電池材料など好採算な高機能化学品を中核事業に競争力を高め、収益構造の転換を急ぐ。「EBITDAマージン」と呼ぶ本業の利益率で26年3月期に18%以上をめざす。
      ・高機能材料で構成する「機能商品」セグメントの中でも消費財や医療関係などの低収益事業について撤退・縮小検討の対象にする。今回の事業撤退・縮小の一環として、カーペットや産業資材などに使われる溶融繊維事業から撤退する。12月末をめどに愛知事業所(愛知県豊橋市)内での製造を停止する。
      ・機能商品セグメントの売上収益は1兆1363億円で、選別を検討する1000億円は1割にあたる規模になる。一時的な損益を除くコア営業利益率は22年3月期の全社で6.8%だった。同セグメントでは食品包装材や炭素繊維などの事業は9.1%、機能性樹脂やポリカーボネート樹脂などの事業は6%、水処理設備などの事業は4.7%だった。
      ・事業選別の数値基準は明らかにしていないが、ジョンマーク・ギルソン社長は注力事業の基準として減価償却費の影響を除いた本業の収益性を評価するEBITDAマージン(売上高に対する利払い・税引き・償却前利益の比率)やROIC(投下資本利益率)などの分析による市場の成長性、競争の優位性や技術革新性、脱炭素社会への貢献度合いを挙げる。こうした観点も踏まえ総合的に判断する。
      ・EBITDAマージンは18年3月期に14.3%。20年3月期に11.7%まで下がった。22年3月期は上昇したが改善は鈍い。ギルソン氏は「汎用化学品の規模が大きくリターンが大きくないことや、これまでのM&A(合併・買収)が期待したほど利益の成長につながっていない」ことが背景にあるとみる。
      ・EBITDAマージンの改善策の一つとして、ギルソン氏は焦点を絞り高付加価値な「スペシャリティマテリアル」に経営資源を集中する方針を掲げる。24年3月期をめどとする石化事業の分離後には、「EV・モビリティ」「デジタル」「食品」など7つを同社が開拓するべき主要市場に定め、26年3月期までの5カ年で7500億円をこれらに優先的に投資する計画だ。EBITDAマージンで26年3月期に18~20%(22年3月期は12.6%)をめざす。
      ・高機能材料への構造改革では欧州の化学世界大手が日本勢に先行している。オランダのDSMは石油化学や樹脂事業を売却する一方、スイスの製薬大手ロシュからビタミン事業を買収してライフサイエンス事業を強化している。独BASFも汎用石化事業を手放し、機能性化学品などを買収してきた。
      ・直近の時価総額はBASFも6兆5000億円程度(21年12月期の連結売上高は785億ユーロ=約11兆4000億円)、DSMが3兆2000億円程度(同92億ユーロ)であるのに対し、三菱ケミカルグループは1兆1000億円程度(22年3月期の売上高3兆9769億円)にとどまる。
      ・三菱ケミカルをはじめ多くの日系化学メーカーの時価総額が総じて低いのは石化事業を抱えて市況の動きに業績が影響されやすく、脱炭素の観点からも評価されにくい事業が多いことが背景にある。ギルソン氏は改革を急ぎ、数年以内に時価総額を世界競合並みにする目標を掲げる。
      ・高機能材料で1000億円規模の事業縮小・撤退を一気に打ち出すのは珍しい。モルガン・スタンレーMUFG証券の渡部貴人氏は「差異化製品の創出による収益拡大に期待したい」とし投資判断は「オーバーウエート(買い推奨)」とする。
      ・中国勢の台頭や国内需要の減少などの化学業界を取り巻く事業環境の変化は、住友化学や三井化学など他の総合化学大手の経営にも影響を及ぼしそうだ。三菱ケミカルにとどまらず、業界全体で国内での余剰生産能力が解消されず、収益の変動率が高い汎用品事業から脱却し、高機能品で稼ぐ力を磨く取り組みが急務になる。
    • IHI、米新興に出資  アンモニア関連技術獲得
      ・IHIは22日、次世代燃料として期待されるアンモニアの関連技術を手掛ける米スタートアップ企業スターファイアエナジー(コロラド州)に出資したと発表した。出資の額や比率は明らかにしていない。同社は二酸化炭素(CO2)を排出しない再生可能エネルギー由来のグリーンアンモニア技術を持つ。
      ・IHIはアンモニアの利用技術開発やサプライチェーン(供給網)の構築を進めており、欧米や日本などのスタートアップと資本・業務面の関わりを増やし、アンモニア技術の獲得をめざす。
      事業がある程度軌道に乗った段階で出資を募る「シリーズB」と呼ばれる資金調達に応じた。スターファイアエナジーはシリーズBで計2400万ドル(約34億円)の出資を得た。同社には大阪ガスや三菱重工業なども出資している。
      スターファイアエナジーは2007年設立で、空気や水、再生可能エネルギー由来の電力でグリーンアンモニアを生産したり、アンモニアから水素を取り出したりするシステムを手掛ける。

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