今日の日経新聞ピックアップ(2022/11/6)

  1. 中小、価格転嫁に遅れ 「全く反映できず」2割 収益低迷、賃上げに影
    中小企業の価格転嫁が遅れている。原材料の高騰などコストの上昇分を販売価格に全く反映できていない会社も約2割に及ぶ。収益の低迷で賃上げの余力が乏しくなれば、景気の下押し圧力が強まる。
    ・「取引先に値上げ交渉するのは難しい。我慢するしかない」。岩手県内の電子機器製造会社の営業担当者は漏らす。樹脂材料の高騰で部品の調達価格は2割ほど上がった。製品価格には上乗せできず、利益を削られている。「最終製品の価格が上がれば、取引先の国際競争力も下がる」と取引先の事情も配慮する。
    ・中小を主な対象とする帝国データバンクの9月の調査で、コスト上昇分を商品・サービス料金に全く転嫁できていない企業は18.1%を占めた。6月調査の15.3%から2.8ポイント上がった。
    東京商工会議所が9月にまとめた中小調査でも、コスト増を「まったく転嫁できていない」が22.9%、「転嫁できたのは半分に満たない」が29.7%だった。サービス業は4割近くが転嫁率ゼロだ。価格に反映できない要因は「需要が減少している」「競合他社が価格を上げていない」「消費者の節約・低価格志向が続いている」がいずれも3割を超えた。
    ・コスト高に見合った価格転嫁それ自体は企業規模を問わず経営課題だ。中小は下請けなどで価格交渉では弱い立場に置かれがちな問題がある。
    ・日銀が10月3日に発表した全国企業短期経済観測調査(短観)で、中小製造業の販売価格判断DI(指数)から仕入れ価格判断DIを引くとマイナス40だった。コストの上昇分を製品価格に転嫁できていない状況を映す。この値は大企業製造業はマイナス29に縮む。
    ・中小の苦境は深まっている。帝国データバンクの調べで、原材料や燃料など物価高の影響による倒産は2022年度上期(4~9月)に前年同期比2倍超の159件に上った。10月以降、さらに膨らむ公算が大きい。
    ・日本商工会議所の三村明夫前会頭は9月の記者会見で「原材料価格やエネルギー価格の高騰は、企業努力で吸収できるほど生易しいものではない」と訴えた。「取引価格を適正化しなければ賃上げの原資は生み出せない」とも強調した。
    ・政府は28日まとめた総合経済対策で、中小に賃上げが着実に広がるよう価格転嫁を促すと明記した。コスト上昇分の取引価格への上乗せを求めても、説明なく価格を据え置く対応を繰り返すといったケースは企業名を公表する。根強いデフレマインドを払拭し、価格転嫁を進めやすい環境を整えられるかも問われる。

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